十字(読み)じゅうじ

精選版 日本国語大辞典「十字」の解説

じゅう‐じ ジフ‥【十字】

[1] 〘名〙
① 十個の文字。十の字。
※説経節・説経苅萱(1631)中「なにかほとけのことなれば、ししゃうの一しをおさづけあれば、十じおさとりある、がくもんにくらいことはましまさず」
② 十の字の形。十文字。
※正法眼蔵(1231‐53)行持上「十字の街頭にして一句の聞経よりのち、たちまちに老母をすてて」 〔呉均‐行路難〕
③ 十字形に交差する街路。四辻(よつつじ)。十字街。十字街頭十字路
④ (「晉書‐何曾」の故事から、また、後世には十の字の焼形を表に印したところから) 蒸餠、饅頭(まんじゅう)の異称。十字餠。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※吾妻鏡‐建久三年(1192)一一月二九日「新誕若君五十日百日儀也〈略〉送給十字」 〔晉書‐何曾〕
検地の時に用いた道具。檜、樫などの反(そ)りの生じない堅木を、縦横共に長さ一尺二寸(三六センチメートル)ほどの十字形に切り組み、中央に水縄を入れる凹条を刻んだもの。これを田畝の中央に張った水縄にあてて角度の測量に用いた。
キリスト教徒が、キリストの十字架における受難になぞらえ、その信仰の証(あかし)として、祈祷の際に手で胸もとに描く十文字。→十字を切る
※先生への通信(1910‐11)〈寺田寅彦〉巴里から「額へ持って行って胸へ下してそれから左の乳から右の乳へ十字を画く」
※薤露行(1905)〈夏目漱石〉四「丈に余る石の十字を深く地に埋めたるに」
所の名。十字架をかたどったといわれる。→クルス
[2] が十字形に並んでみえる白鳥座、南十字座をいう。

じゅう‐の‐じ ジフ‥【十字】

〘名〙
漢数字の十。また、その形をしたもの。
② 紋所の名。二重丸の中に十字をかたどったもの。島津家の紋として有名。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「十字」の解説

十字
じゅうじ
cross 英語
Kreuz ドイツ語
croix フランス語

「十」の字の形をしたしるし。キリスト教の十字架をはじめ、宇宙原理などを象徴するものとして世界的に広くみいだされる。

 古代シュメールおよびヒッタイトでは文字として用いられ、エジプトおよびアッシリアの王または聖職者は、その着衣の飾りに使っていた。漢字では、単に数を表すばかりでなく、まとまりをもつ完備した数であることから完全の意味を表す。

 バビロニアでは天の神アヌ神、ギリシアでは太陽神アポロの、それぞれ象徴とされた。このように十字は、天・太陽はもとより、法・中心・宇宙の最高原理、地上と天界とを結ぶ生命の木などを表すことが多い。また、男女の結合を示したり、多産・豊饒(ほうじょう)を意味する象徴として、古代メキシコのほか各地で用いられている。インドでは、その変形である「(まんじ)」の右回りになったものをスバスティカsvastikaといって男性原理、左回りになったものをサウバスティカsauvastikaといって女性原理を示した。これは、ヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教においても用いられ、日本には仏教とともに伝えられ仏教や寺院の記号となった。

 ドイツのナチスは「卍」を民族結合の象徴として用いた。心理学者のユングは、十字は秩序を象徴し、人間の心の深層にもあまねく存在する原型的なものであるとみなした。

[鈴木範久]


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デジタル大辞泉「十字」の解説

じゅう‐じ〔ジフ‐〕【十字】

10個の文字。
十の字の形。十文字じゅうもんじ
キリスト教徒が、キリストが受難にあった十字架になぞらえて、祈祷きとうの際に手で描く十字の形。
十字形に並んで見える星座。北半球では白鳥座はくちょうざ、南半球では南十字座
検地の用具。材木で、縦横ともに1尺2寸(約36センチ)くらいの十字形に切り組み、中央に水縄を入れるくぼみを刻んだもの。これを田の中央に張ってある水縄に当てて角度を測量する。
十字もち」に同じ。
踏馬勢子たふばせこの輩を召して、各―を賜ふ」〈吾妻鏡・一三〉
[類語]大の字十文字真一文字

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百科事典マイペディア「十字」の解説

十字【じゅうじ】

2本あるいはそれ以上の線が組み合わさってできる形象総称。英語でcross。正(ギリシア)十字,T(タウ,アントニウス)十字,ラテン(ローマ)十字,鉤十字ないしガンマ十字(ガンマディオン)などの類型がある。インド起源のスワスティカ(日本の卍(まんじ)),ナチスの標章ハーケンクロイツは鉤十字の一種。古来さまざまな象徴として用いられ,特に十字架はキリストの受難と救済を示すものとして敬される。

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世界大百科事典 第2版「十字」の解説

じゅうじ【十字 cross】

2本またはそれ以上の線が交差している図形の総称。古くから宗教的象徴として用いられてきたもので,その形状により主として次の4種類に分けられる。 (1)中心から広がる4本の線の長さが等しい正十字(またはギリシア十字),マルタ十字とよばれるものなど。この十字はアッシリアでは天空神アヌの象徴で,と8本の光線を伴い太陽や星をあらわすものとしても使用され,ギリシアでは太陽神アポロンの象徴,ローマでは星の輝きをあらわすものとされた。

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世界大百科事典内の十字の言及

【辻子】より

…十字状の道を意味する平安時代の言葉〈十字〉に由来し,その意を表す国字としてつくられた〈辻〉の意味が分化したものであって,細道(《名語記》),小路(《節用集》),ついで横町(《日葡辞書》)の意味にも用いられた。古くは十字,ついで辻,辻子と書かれ,室町時代以降になると図子,通子,厨子,途子などの用例もある。…

※「十字」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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