日本大百科全書(ニッポニカ) 「松風ごま」の意味・わかりやすい解説
松風ごま
まつかぜごま
江戸時代に流行した玩具(がんぐ)。竹を幅1.5~3センチメートルほどに薄く割って、長さ3センチメートルくらいに切り、その中央に錐(きり)で二つの孔(あな)をあけて緒を通す。その緒の端を左右の手で引けば、しゅうしゅうと竹片が回転して鳴る。文政(ぶんせい)年間(1818~1830)の中ごろ流行したが、これより以前に「すべたごま」という同型のものがあり、また雲雀(ひばり)ごまなど、前後して各種のものが現れた。松風ごまは、竹のほか鯨(くじら)の鰭(ひれ)、象牙(ぞうげ)、べっこう、縮緬(ちりめん)、錦(にしき)などの材料でつくられ、鳴る音が松風に似ているのでこの名がついた。明治以降もブリキ製がビービーの名で市販され、竹製、ボール紙、板製などが工作玩具としても昭和初期まで親しまれ、現在も小物玩具として売られている。
[斎藤良輔]