ひれ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ひれ
ひれ / 鰭

水生の脊椎(せきつい)動物の運動器官として、体壁から突出する平板状または膜状の構造物をいう。櫓(ろ)あるいは舵(かじ)として、移動および姿勢制御にあたる。ひれは魚類でもっともよく発達し、さまざまの形に変化している。一般的には、中央鰭(き)(不対(ふつい)鰭)と側鰭(対鰭)に分けられ、前者には背びれ、臀(しり)びれ、尾びれ、後者には胸びれと腹びれがある。これらのうち、胸びれと腹びれは、それぞれ四足動物の前肢と後肢に相当する。魚類では、ひれの基部にある担鰭骨から鰭条が放射状ないし平行に出て、鰭膜(ひれの膜状部)を支えている。ただし、脂びれではこのような支持構造はない。
 ほとんどすべての魚の仔魚(しぎょ)あるいは稚魚で、中央鰭の出現に先だって正中線上に鰭襞(きへき)というひだが生じ、これがやがて中央鰭にかわること、また、化石魚類の研究から、ひれの起源は鰭襞と考えられる。一方、特別な形に変化し、特殊な役割を果たすようになったひれもあり、たとえばハゼでは腹びれが、コバンザメでは背びれが、それぞれ吸盤となっている。チョウチンアンコウがもつ発光性の突起も背びれが変化したものであり、トビウオやトビハゼ、ホウボウでは胸びれが飛翔(ひしょう)や歩行のために都合よく変化している。さらに、ツバメコノシロやゴンベでは胸びれが長く伸びて感覚器となっている。
 水生の両生類にも中央鰭に相当する構造があり、水生哺乳(ほにゅう)類でも皮膚のひだとしてのひれがみられ、とくに前肢がひれ状になることが多い。[町田武生]

食品

魚はひれも利用できる。中国ではサメのひれの乾燥品は高級な材料とされ、煮物やふかひれのスープとして利用されている。長時間煮るとひれの堅い成分はゼラチン質に変化し、透明でつるりとした状態になる。日本では、フグ、タイ、エイなどのひれの利用が多い。フグやタイのひれは、ひれ酒にして飲むと体が暖まるので冬にはよく賞味される。切り取ったひれを乾燥し、火で焦がし加減にあぶってコップに入れ、熱い燗酒(かんざけ)を注ぐ。エイのひれは干物やみりん干しに加工し焼いて食べる。[河野友美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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