縮緬(読み)チリメン

デジタル大辞泉 「縮緬」の意味・読み・例文・類語

ちり‐めん【×緬】

表面に細かいしぼのある絹織物。縦糸にりのない生糸横糸に強く撚りをかけた生糸を用いて平織りに製織したのち、ソーダをまぜた石鹸せっけん液で煮沸して縮ませ、精練したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「縮緬」の意味・読み・例文・類語

ちり‐めん【縮緬】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 絹織物の一種。布面に細かな縐(しじら)縮みがある。経(たていと)によりのない生糸(きいと)、緯(よこいと)によりの強い生糸を使って平織りにし、ソーダをまぜた石鹸液で数時間煮沸してちぢませ、水洗いをして糊気を取り除き、乾燥させて仕上げたもの。衣服・帯地・裏地ふろしきなどに用いられる。天正(一五七三‐九二)の頃、大坂堺に住む織工がたまたま渡来した明人から製法を習い、織りはじめたものといわれる。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「酒のめはかほのしはすや紅ちりめん」(出典:俳諧・犬子集(1633)六)
  3. ちりめんじわ(縮緬皺)」の略。
    1. [初出の実例]「ちりめんの猿がなりけり梅の花」(出典:俳諧・文政句帖‐七年(1824)二月)

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改訂新版 世界大百科事典 「縮緬」の意味・わかりやすい解説

縮緬 (ちりめん)

生地の表面に細かな縮じわ(しぼ(皺))のある絹織物。天正(1573-92)のころ,明国から堺(大坂)の織工が織法を伝え織りはじめたものという。その後,京都西陣で大成し各地に広まる。現在の産地は享保(1716-36)のころ,京都から伝わって織り出した丹後を第一とし,長浜,春江,小松等。経糸に生糸を引き揃えて用い,緯糸はちりめん緯(よこ)と呼ぶ1mに2000~3800回ほどの強撚糸を使う。生糸のもつセリシン(膠質)を利用して撚止めを施し,右撚り,左撚りの強撚糸をそれぞれ2本交互に打ち込んで平織に織る。のち精練をしてセリシンを除去する。セリシンを取ると撚止めが効かなくなり,強撚糸の撚りの戻る力が作用して縮み,しぼの凹凸が表面に出る。セリシンの除去で約25~27%の減量となり布面が縮まる。幅出し仕上げ,蒸してしぼ止めをする。原料の種類と使い方,組織等により品種は多い。生糸のみ使ったものを本ちりめん,玉糸入りのものは玉ちりめん,紬入りは紬ちりめんなどと呼ぶ。ちりめん緯の配列の違いによってしぼの表れ方,形が異なり,左右1本交互を一越(ひとこし),2本交互を錦紗きんしや),3本交互を三越,4本交互以上で出るしぼを〈うずら〉,片撚りだけのものは片しぼ,立てしぼ,楊柳と呼び絹縮になる。段ちりめんはちりめん緯と平糸などをさまざまに混ぜて織り込んだもので,経緯に強撚糸を使ったものをジョーゼット・クレープと呼ぶ。またしぼや組織,素材の違いで,鬼,小浜,烏帽子,雲井,九重,シャルムーズ,ロイヤルクレープ,ミラニーズ,パレス,フラット,デシン,モロケーン,呂,紋,壁,丸紡(絹紡糸入),観光(綿入),アセテート等人絹,合繊の各ちりめんがある。しなやかでしぼのため染色も深みのある色が出せ用途は広い。小幅物と広幅物があり,着尺,羽尺,帯地,半襟,じゅばん,裏地,夜具地,ふろしき,ドレス,スカーフ等に使われる。水に合うと縮むが近年は防縮加工も施される。生糸消費量の40~50%を占め,変りちりめん等を含め1000万反(1976)以上が生産されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「縮緬」の意味・わかりやすい解説

縮緬
ちりめん

緯(よこ)糸に強撚糸(きょうねんし)を交互に打ち込んだ絹織物の総称。一般には経(たて)糸に撚(よ)りのない生糸、緯糸に強撚の生糸を用いて平織に製織したのち、ソーダを混ぜたせっけん液で数時間煮沸して縮ませ、水洗いして糊(のり)けを去り乾燥させて仕上げたもの。この強撚の緯糸を縮緬緯といい、一般に右撚り2本、左撚り2本を交互に織り込むが、品種により1本または3本を交互に入れることもあり、縮緬のしぼの大きさに変化をもたせることがある。たとえば一越(ひとこし)縮緬は、左右の撚糸を一越(緯糸1本)ごと交互に織り込んだものである。

 この縮緬の製造に際しては、撚糸法の改良が問題となる。蚕糸自体は長繊維なので、製織のため撚りをかける必要はなく、古代では一部のものを除いてほとんどのものが無撚(むより)であるが、13世紀ごろ中国で「大紡車」(一度に多くの撚糸が製造できる道具で、水車動力を利用する。日本の撚糸八丁車(よりいとはっちょうぐるま)に相当するもの)が発明されてからは、蚕糸に撚りをかけることが一般化してくる。このような事情が縮緬の製造に拍車をかけたものとみられる。日本へは天正(てんしょう)年間(1573~92)に中国の織工が堺(さかい)に技術を伝え、それが西陣(にしじん)へ伝わったとされている。一方、西欧へ伝わったものは一般にクレープとよんでいるもので、多くの種類を生んでいった。

 縮緬は原糸、用途、糸使いなどによって、西陣縮緬、丹後(たんご)縮緬、岐阜縮緬、浜(はま)縮緬、桐生(きりゅう)縮緬、足利(あしかが)縮緬などが各地方に生まれ、鬼縮緬、鶉(うずら)縮緬、絽(ろ)縮緬、紋縮緬、錦紗(きんしゃ)縮緬などがある。用途は広く、着尺地、羽尺地、帯地などに使われる。また広幅のものは、クレープとよび、フラット・クレープ、ジョーゼット・クレープなどがあって、婦人服地として用いられている。

[角山幸洋]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「縮緬」の意味・わかりやすい解説

縮緬
ちりめん

染生地として使われる高級絹織物の一種。経糸に撚 (よ) りのない平糸,緯糸に左右強撚りの生糸を用い,通常右撚り2本,左撚り2本を交互に織り込み,平織に組織させ,煮沸して精練すると緯糸に撚りが戻ろうとする力が相互に働き,布面に独特の縮 (ちぢみ) が現れる。縮緬ができるのは生糸だけであって,他の繊維ではできない。天正年間 (1573~92) 堺の織工が明の技法を学んで織り出したと伝えられ,京都の西陣から丹後,長浜 (浜縮緬) へと伝わり,この地方が縮緬の主産地となった。しぼの大小によって一越縮緬,古浜縮緬などがある。

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世界大百科事典(旧版)内の縮緬の言及

【織物】より

…遣明貿易船が生糸や珍しい織物を多数積んで入港すると,彼らは誰よりも早く良質の生糸を手に入れ,また珍しく新しい織物に接することによって新技術の導入とその生産に努め,堺の機業を急速に発展させたのである。応仁の乱後,新たに日本で開発された金襴や唐織,緞子,紋紗,繻子,縮緬(ちりめん),紗綾(さあや),綸子(りんず)などは,こうした明の技術を学んだ結果であった。
[木綿の普及]
 日本で木綿が一般に普及したのは近世である。…

【着物】より

…それは商業の発展によるもので,封建制度の身分差はさまざまの面で服装を支配したにもかかわらず,絹は江戸中期以後は富裕な町人階級にも広くゆきわたった。羽二重や縮緬(ちりめん)は,江戸中期以後に,主として前者は男子用,後者は女子用の代表的な絹織物となった。絽(ろ)は夏向きに利用され,紬は絹のなかではいちばん庶民的な織物であった。…

【縮】より

…生地全体にしぼ(皺),しじら(縬)のある織物の総称。広義にはちりめんも含まれる。織り方に縮としじらがあり,縮は平織の緯糸に強撚糸や収縮糸を用いて織ったのち,湯に浸してもんで縮ませ,表面に小さな波状の凹凸を出したもの。…

※「縮緬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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