楠葉関(読み)くすはのせき

改訂新版 世界大百科事典 「楠葉関」の意味・わかりやすい解説

楠葉関 (くすはのせき)

中世,河内国交野郡楠葉(古くは葛葉,樟葉とも表記。現,大阪府枚方市)の淀川沿岸にあった関所。関所設置の時期は明確でないが,《太平記》によれば,後醍醐天皇の親政にあたり,〈商賈往来ノ弊,年貢運送ノ煩アリ〉として新関が停止されたときにも,大津,楠葉のみは除外されていることによって由緒の深さが知られる。1340年(興国1・暦応3)には,院宣により,楠葉関は春日社造営料所に充てられており,48年(正平3・貞和4)には,伊勢国から宝剣を進上した円成阿闍梨なる者に,恩賞として同関を与えるとの院宣が下されたが,〈葛葉ノ関ハ,年来南都ノ管領ノ地ニテ候ヲ,無謂召放レン事,衆徒ノ嗷訴ヲ招クニテ候ハズヤ〉というわけで直ちに返付されている。ここから楠葉が南都管領の関であったことがわかる。楠葉における関銭収益については,文明年間(1469-87)興福寺大乗院門跡領として,〈楠葉関千百貫〉という記事がある。なお,この地には,山科家の支配する内蔵寮(くらりよう)領楠葉率分所も存在した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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