横断賃率(読み)おうだんちんりつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「横断賃率」の意味・わかりやすい解説

横断賃率
おうだんちんりつ

産業別労働組合と産業別経営者団体との間の団体協約で決められる産業別の賃率のこと。労働組合が産業別単一組織の形態をとるヨーロッパ諸国の賃金決定は、通例この方式である。国家試験による資格免状などの客観的な基準に基づき、職種別、熟練度別に最低の賃率を決定するのがその特徴であり、同一職種、同熟練度の労働者には、企業の条件の違い、年齢、勤続年数などの違いを超えて、同一賃率が適用される。ただし、その賃率はあくまで最低基準であり、企業ごとの上のせを排除するものではない。実際にも、この賃率を大幅に上回る賃金を支払うことにより職務給化を推進しようとする大企業の動きが強まるなかで、企業間格差は無視できないものとなっている。日本の場合、労働組合が企業別の形態をとり、産業別団体協約の締結はきわめて困難な状況にあるうえ、職種区分の客観的基準が存在しないなど、その成立の条件は未成熟といえる。

[横山寿一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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