国家試験(読み)コッカシケン

デジタル大辞泉 「国家試験」の意味・読み・例文・類語

こっか‐しけん〔コクカ‐〕【国家試験】

特定の資格を認定し、または一定の免許を与えるために国家の行う試験。国家公務員採用試験・司法試験や、医師公認会計士税理士建築士などの試験。国試。
旧制度高等文官試験普通文官試験の俗称。

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精選版 日本国語大辞典 「国家試験」の意味・読み・例文・類語

こっか‐しけんコクカ‥【国家試験】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 国家の行なう試験。広義には、国家公務員の採用試験もいうが、ふつう、ある種の業務について、一定水準の専門的な技能を判定するため、国家が行なう試験をいう。司法試験、医師国家試験、公認会計士試験など。
    1. [初出の実例]「彼は医師の国家試験にむかって努力した」(出典:硝酸銀(1966)〈藤枝静男〉二)
  3. 旧制度で、高等官文官となるための高等試験および普通試験の俗称。
    1. [初出の実例]「高文の国家試験では」(出典:彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉五)

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改訂新版 世界大百科事典 「国家試験」の意味・わかりやすい解説

国家試験 (こっかしけん)

国の法律に基づき,国が個人の能力,知識,技能を判定し,職業資格を付与する試験。試験に合格し,資格を得ると,法律により一定の社会的地位を保障される。代表的なものとしては,以下のような試験がある。

 (1)法律技術に関するもの 司法試験など。(2)会計技術等に関するもの 公認会計士試験,税理士試験弁理士試験など。(3)医術に関するもの 医師国家試験,歯科医師国家試験,獣医師国家試験,薬剤師国家試験,看護師国家試験,助産師国家試験,保健師国家試験など。(4)工業技術に関するもの 技術士試験,エネルギー管理士試験,高圧ガス製造保安責任者試験,ガス主任技術者試験,電気主任技術者資格試験,電気工事士試験,ボイラ技士試験,ボイラ溶接士試験など。(5)運輸・通信技術に関するもの 自動車整備士試験,海技従事者国家試験,水先人試験,航空従事者試験,無線従事者国家試験など。(6)その他 管理栄養士試験,計量士国家試験,不動産鑑定士試験,一級建築士試験,土地家屋調査士試験,旅行業務取扱主任者試験など。

 しかし,国家試験の範囲は必ずしも明確ではなく,名称もつねに国家試験とうたっているわけではない。たとえば国家公務員法により,国家公務員の採用・昇任は競争試験によるべきものとされ,その試験は国家によって行われているが,これを国家試験に含めない見解もある。

 広義に解した場合,国家試験には実施する主体から,(1)人事院など国の行政機関が直接実施するもの,(2)都道府県など地方自治体が直接実施するもの,(3)国または都道府県の指定する団体が実施するもの,に大別される。(1)には公認会計士試験,弁理士試験,不動産鑑定士試験,医師国家試験,一級建築士試験など,(2)には保育師試験,宅地建物取引主任者試験,二級建築士試験など,(3)には中小企業診断士試験,旅行業務取扱主任者試験,などがある。

 また,国家試験に合格すると得られる資格を職業上,法律で保障される地位との関連でみると,次の三つに分けられる。(1)職業上特定の業務についての独占的,排他的地位が保障される資格。この場合には,資格がないとその職業に従事することができない。医師,公認会計士,税理士,宅地建物取引主任者などがそれに当たる。(2)公務員としての知識,能力を示す資格。これは国家公務員のⅠ種・Ⅱ種・Ⅲ種などの公務員試験によって与えられる資格である。一般には公務員採用試験と称されているが,試験の性格はあくまでも公務員としての資格を問うもので,有資格者のなかから採用が行われるという点で,採用試験合格者全員が採用,就職できる民間企業の就職試験とは性格を異にしている。(3)特定の知識,技能の水準を認定する資格。情報処理技術者,技能士などがこれに該当するが,この場合には,知識,技能の水準を認定することが目的で,その資格がないと,該当する業務,職種に従事できないわけではない。

 〈資格社会〉の到来でいくつかの国家試験は難化の傾向にある。司法試験の場合には合格率は2.9%,合格者の平均年齢は約28歳,となっている(1996年度)。医師国家試験の場合には,大学医学部を卒業することが前提条件とされているため,国家試験そのものよりも,医学部への入試競争が激化している。医師国家試験の合格率は,近年ほぼ80%程度のところを推移してきた(ちなみに96年度の合格率は89%)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国家試験」の意味・わかりやすい解説

国家試験
こっかしけん

公務員の採用または、特定の業務に必要な資格(一定の地位・活動についての免許を与えるため)などその合格者に資格を付与したり、一定の技能を証明するために国家が管理して行う試験。おもな国家試験としては次のようなものがある。まず採用試験として分類されるものに、国家公務員総合職・一般職・専門職・経験者採用試験(2012年度から、国家公務員制度改革基本法により、従来の国家公務員採用Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ種、その他の採用という試験制度の見直しが行われた)などがあり、合格者は国家公務員の資格を得る。公務員の身分を離れた場合、その資格はなくなる。次に資格試験として、弁護士、医師、公認会計士、司法書士、税理士などの業務を行うための資格取得を目的とする試験がある。また国家が特定の技能を有することを認定・証明する認定試験があり、情報処理技術者試験など各種技能についての試験で技術者などの称号を得ることができる。なお国家試験は、このほか試験主体からの分類も可能である(国・地方自治体、それ以外の団体の行う試験という観点からの分類)。

[平田和一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国家試験」の意味・わかりやすい解説

国家試験
こっかしけん

一定の資格があることを認定するために国が行なう試験。特定の職業や社会的地位につく者に必要な資格要件として,法律の定めるところにより国が行なう試験に合格することを必要としている場合が少なくない。それは,一定水準の学識,技術を具備することが要請されている場合に,客観的にその資格のあることを公認するためである。弁護士,医師,看護師薬剤師,一級建築士弁理士税理士不動産鑑定士公認会計士などの国家資格を得るためには受験が義務づけられている。

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百科事典マイペディア 「国家試験」の意味・わかりやすい解説

国家試験【こっかしけん】

一定水準の専門的技術を必要とする業務につく者に対して国が行う資格試験。試験に合格し,技能証明を得なければその業務に従事することは許されない。国家公務員の任用試験も広い意味で国家試験である。司法試験,医師・薬剤師・公認会計士・一級建築士の試験など種類はきわめて多い。

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世界大百科事典(旧版)内の国家試験の言及

【試験】より

… 現代社会の試験はまた,各種の資格制度と結びつき,資格の賦与や制限の手段としても重要な役割をはたしている。医師,弁護士,教員などの専門的職業の資格認定や,行政官僚の選抜・任用のために国家の行う試験(国家試験)は,その典型例である。特定の人々だけに資格を与え,制限することを目的としたこの種の試験は,それが公共の福祉や社会的公正という点で,必要であると認知されてはじめて正統性をもちうる。…

※「国家試験」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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