日本大百科全書(ニッポニカ) 「歙県」の意味・わかりやすい解説
歙県
きゅうけん / ショーシエン
中国、安徽(あんき)省南東部にある黄山(こうざん)市の県。新安江(しんあんこう)の上流域に位置し、浙江(せっこう)省に隣接する。人口48万4782(2010)。漢代に歙県が置かれ、唐代に歙州の治所となり、宋(そう)代に徽州(きしゅう)に改められた。明(みん)・清(しん)代は徽州府の治所であった。周辺農村では米のほか茶の栽培が盛んで、黄山毛峰(ホワンシャンマオフォン)茶、老竹大方(ラオチューターファン)茶などの銘茶を産出する。伝統工業では製茶のほかに、墨、硯(すずり)の製造が行われ、徽墨(きぼく)、歙硯(きゅうけん)の名で知られる。県の北西境にある黄山は観光地、保養地として名高く、1990年ユネスコ(国連教育科学文化機関)により世界遺産の複合遺産(文化、自然の両方の価値がある遺産)に登録された(世界複合遺産)。
[林 和生・編集部 2017年7月19日]