気疎(読み)きょうとい

精選版 日本国語大辞典 「気疎」の意味・読み・例文・類語

きょうと・い ケうとい【気疎】

〘形口〙 けうと・し 〘形ク〙 (古く「けうとし」と発音された語の近世初期以降変化した形。→けうとい)
① 人気(ひとけ)がなくてさびしい。気味が悪い。恐ろしい。
浮世草子・宗祇諸国物語(1685)四「なれぬほどは鹿狼(しかおほかみ)の声もけうとく」
※読本・雨月物語(1776)吉備津の釜「あな哀れ、わかき御許のかく気疎(ケウト)きあら野にさまよひ給ふよ」
② 興ざめである。いやである。
※浮世草子・男色大鑑(1687)二「角落して、きゃうとき鹿の通ひ路」
③ 驚いている様子である。あきれている。
日葡辞書(1603‐04)「Qiôtoi(キョウトイ) ウマ〈訳〉驚きやすい馬。Qiôtoi(キョウトイ) ヒト〈訳〉不意の出来事に驚き走り回る人」
④ 不思議である。変だ。腑(ふ)に落ちない。
浄瑠璃・葵上(1681‐90頃か)三「こはけうとき御有さま何とうきよを見かぎりて」
⑤ (顔つきが)当惑している様子である。
※浄瑠璃・大原御幸(1681‐84頃)二「弁慶けうときかほつきにて」
⑥ (多く連用形を用い、下の形容詞または形容動詞につづく) 程度が普通以上である。はなはだしい。
※浮世草子・好色産毛(1695頃)一「気疎(ケウト)く見事なる品もおほかりける」
⑦ 結構である。すばらしい。立派だ。
※浄瑠璃・伽羅先代萩(1785)六「是は又けふとい事じゃは。そふお行儀な所を見ては」
きょうと‐が・る
〘自ラ四〙
きょうと‐げ
〘形動〙
きょうと‐さ
〘名〙

け‐うと・い【気疎】

〘形口〙 けうと・し 〘形ク〙 (近世初期頃から多く「きょうとい」と発音された。→きょうとい)
① 気にいらず、それから離れたい感じである。また、気持が離れてしまっている。いとわしい。うとうとしい。
蜻蛉(974頃)中「このさるまじき御中のたがひにたれば、ここをもけうとくおぼすにやあらん」
② 人気(ひとけ)がなくてさびしい。
源氏(1001‐14頃)夕顔「けうとくもなりにける所かな。さりとも、鬼なども、我をば見許してん」
③ 気味が悪い。興ざめな様子である。
※宇治拾遺(1221頃)六「かほ、をかしげながら、ね入るたびに、すこしけうとく見ゆ」
[補注]近世以後の用例は「きょうとい」の項に掲げた。
けうと‐げ
〘形動〙
けうと‐さ
〘名〙

け‐うとまし【気疎】

〘形シク〙 いとわしい。うとましい。恐ろしくて、いやである。けうとい。
※栄花(1028‐92頃)花山たづぬる中納言「今年いかなるにか大風吹き、なゐなどさへふりて、いとけうとましき事のみあれば」

きょうと ケうと【気疎】

(形容詞「きょうとい」の語幹) 恐ろしいこと。気味の悪いこと。また、興ざめなこと。あきれたこと。多く感動表現に用いる。
雑俳さざれ石(1730)「ヲヲけふと・約束同士が取違へ」

きょうと・し ケうとし【気疎】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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