栄花物語(読み)エイガモノガタリ

デジタル大辞泉 「栄花物語」の意味・読み・例文・類語

えいがものがたり〔エイグワものがたり〕【栄花物語/栄華物語】

平安時代歴史物語。40巻(正編30巻、続編10巻)。作者については正編が赤染衛門あかぞめえもんとする説が有力。続編については出羽弁といわれるが未詳。正編30巻は万寿5~長元7年(1028~34)の間、続編10巻は寛治6~嘉承2年(1092~1107)の間の成立とされる。藤原道長頼通栄華を中心に、宇多天皇から堀河天皇まで15代、約200年間の歴史を物語風に編年体で記す。世継よつぎ物語。世継

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精選版 日本国語大辞典 「栄花物語」の意味・読み・例文・類語

えいがものがたりエイグヮものがたり【栄花物語・栄華物語】

  1. 平安時代の歴史物語。四〇巻。作者は正編は赤染衛門、続編は出羽の弁とする説などがあるが未詳。正編三〇巻は長元年間(一〇二八‐三七)、続編一〇巻は寛治六年(一〇九二)以後間もない頃の成立とされる。宇多天皇から堀河天皇の寛治六年まで、一五代約二百年の歴史を編年体で記述。正編は藤原道長の栄華を中心に、宮廷、貴族に関するできごとをかな書きで物語風に記す。続編の視点はやや散漫。世継。世継物語

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「栄花物語」の意味・わかりやすい解説

栄花物語
えいがものがたり

平安後期の歴史物語。宇多(うだ)天皇から堀河(ほりかわ)天皇の1092年(寛治6)2月まで、15代200余年間の宮廷貴族社会の歴史を編年体で叙述したもの。主題文体などの相違により、初めの30巻を正編、あとの10巻を続編とよんで区別している。

 正編の前半は、主として藤原道長が政権抗争に打ち勝って権勢の座について栄華を極めるまでを、摂関政治の犠牲となって敗退した者の姿をも克明に描き、後半は、道長の仏事や信仰生活を中心に、子女出家や死に直面して人生の悲哀をかみしめた人間道長の姿を描いている。その構成は、「をかしくめでたきもの」と「あはれにかなしきもの」、明暗悲喜を対照させているところに特徴がある。正編の成立は道長の死後まもないころ(1035以前)で、赤染衛門(あかぞめえもん)の作とみる説が有力である。続編は、正編の道長のように物語の核となる人物がいないため、宮廷生活の一般的な叙述に中心があり、行事の詳しい模様や盛儀の際の女房の服飾に筆が費やされ、構想も散漫で、形象性に乏しく、事実の平板な羅列に終始している。その成立は不明な点が多く、正編とは作者が別人であるうえに、巻37までとそれ以後では、作者を異にするといわれている。『栄花物語』では、文学的な興趣によって感覚的に歴史を把握しており、個々の歴史事象の背後に潜む歴史の真実を描くよりも、事件をめぐって生起する人々の心情や人の世の哀感を、事実を主観的に潤色したり、虚構を用いたり、さらには、『源氏物語』の文章を模倣するなどして描いていて、作り物語的性格が濃厚であり、冷徹な目で人間を直視し、その内面へ踏み込んで描く態度が希薄である。しかし、歴史物語の嚆矢(こうし)として、新しい領域を開拓した意義は大きい。

 現存本は、写本として三条西家旧蔵本、陽明文庫本、西本願寺本、富岡家旧蔵甲本、同乙本などがあり、刊本として古活字本、明暦(めいれき)2年(1656)刊本などがある。

[竹鼻 績]

『松村博司著『栄花物語の研究』正続(1956、1960・刀江書院)』『松村博司著『栄花物語の研究 第三』(1967・桜楓社)』『河北騰著『栄花物語研究』(1968・桜楓社)』『松村博司・山中裕校注『日本古典文学大系75・76 栄花物語 上下』(1965・岩波書店)』


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百科事典マイペディア 「栄花物語」の意味・わかりやすい解説

栄花(華)物語【えいがものがたり】

平安後期の歴史物語。正編30巻,続編10巻。正編の成立は,長元年間(1028年―1037年)ごろと推定され正編とは別の作者によるものと考えられる続編10巻も,その記事の最後1092年の後間もなく完成したと推定される。作者は赤染衛門説ほか諸説がある。宇多天皇から堀河天皇までの約200年間を編年体で物語風に記述。藤原道長の栄華を中心に宮廷貴族の生活を描き,風俗史の資料としても重要。《源氏物語》の影響が強い。
→関連項目大鏡世継物語

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「栄花物語」の意味・わかりやすい解説

栄花物語
えいがものがたり

平安時代後期の歴史物語。『栄華物語』とも書き,『世継 (よつぎ) 』あるいは『世継物語』ともいう。作者不詳。 40巻。初めの 30巻を正編,残り 10巻を続編と呼ぶ。正編は宇多天皇から後一条天皇の万寿5 (1028) 年まで。宇多,醍醐,朱雀の3代は系譜のみで,六国史を継ぐ体裁をとるために加えられたのであろう。中心は藤原道長の生涯を賛仰するところにあり,彼の一家の栄華を記し,儀式,仏事,遊宴などを詳述する。多くの資料を用いて史実にもおおむね忠実であるが,政治の裏面で泣く女たちの姿を好んで描くなど,物語的要素が強く,『源氏物語』の影響が著しい。正編の作者は赤染衛門とする説が有力。続編は長元3 (30) 年から堀河天皇の寛治6 (92) 年まで。この 10巻には一貫した主題がなく,何度かにわたって付加されていったものといわれる。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「栄花物語」の解説

栄花物語
えいがものがたり

「栄華物語」「世継(よつぎ)」「世継物語」とも。平安時代の歴史物語。40巻。巻30までの正編と,以下の続編にわかれる。正編の作者としては赤染衛門(あかぞめえもん)が有力視されるが,確証はない。続編作者は未詳。正編は長元年間(1028~37),続編は1092年(寛治6)以降まもなくの成立とみるのが定説。正編は村上朝から藤原道長の死までを整った編年体で描く。後宮に歴史をみるという姿勢が基本。道長に対する賛美的記述が多く,批判性に乏しい。続編は30~92年(長元3~寛治6)を扱うが,散漫で統一的な構造がみえない。摂関時代史をはじめて描き,また歴史物語の最初の作品として「大鏡」以下の諸作品の先駆となった。歴史と文学の両面で重要な作品。「新編日本古典文学全集」「日本古典文学大系」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「栄花物語」の解説

栄花物語
えいがものがたり

平安後期の歴史物語
『世継物語』ともいう。11世紀の成立。40巻。正編30巻は赤染衛門,続編は出羽の弁の作というが確証はない。宇多天皇から堀河天皇まで約200年の宮中を中心とした貴族社会の歴史を編年体で記述。主題は藤原道長の栄華で批判性に乏しい。史書としては和文編年体の最初で,女房の日記などを資料に使ったらしく,概して正確である。

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デジタル大辞泉プラス 「栄花物語」の解説

栄花物語

山本周五郎の長編歴史小説。1953年刊行。江戸中期の改革者、田沼意次の苦闘を描く。

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