知恵蔵 「永遠の0」の解説
永遠の0
放送作家である百田が50歳で作家デビューした作品で、2006年8月に太田出版から書き下ろしで発表、09年7月には講談社から文庫本が発売された。13年10月15日付けのオリコン本ランキングの文庫部門で累計売り上げ100万部を突破した。累計売り上げ100万部突破は、文庫部門では歴代13作目。13年12月20日時点での売り上げは390万部で、これは文庫市場全体で今世紀初の数字となる。
百田は、「戦争を体験した父が闘病中に、戦争のことを語り継いでいくことが必要であると感じてこの小説を書いた」と言う。物語は、第2次世界大戦時の戦闘機ゼロ戦の搭乗員を主人公に、壮大な愛や真摯に「生きる」姿勢を描く。妻との「娘に会うまでは死なない」という約束を果たすため、「海軍航空隊一の臆病者」と侮辱された凄腕(すごうで)の操縦士の真実の姿という設定。作品はフィクションだが、実在の人物に関するエピソードが盛り込まれている。また、真珠湾攻撃から始まり、ミッドウェー、ガダルカナル、マリアナ沖、サイパン、沖縄など、戦況が順を追って描かれるため、戦争を知らない世代にも分かりやすいという。
映画「永遠の0」は、13年12月21日、岡田准一、三浦春馬、井上真央らをメーンキャストに全国東宝系で公開された。「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズの山崎貴を監督に、主題歌はサザンオールスターズが歌う「蛍」。当初、同作品の映画化には無理があるとしてきた百田も山崎貴・林民夫の脚本に納得し映画化が実現。14年2月4日現在、公開から7週連続首位となり、観客動員は累計544万人を超え、興行収入は66億6700万円を突破した。
(金谷俊秀 ライター / 2014年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報