改訂新版 世界大百科事典 「津軽ヒバ」の意味・わかりやすい解説
津軽ヒバ (つがるひば)
青森県の西半分を占める旧弘前藩の領内に生い茂るヒバを称し,美林をなす。陸奥(むつ)ヒバとも青森ヒバともいう。秋田の杉林,木曾(長野県木曾郡一円)のヒノキ林とともに〈日本三大美林〉の一つとして知られている。本州最北端の津軽・下北両半島に密生するヒバ(正確にはヒノキアスナロ)の天然生林と,津軽藩の保護・造林施策によって今日あるヒバを主木とする針葉樹林の総称である。県東半の旧盛岡藩領内にもヒバは広く分布しているが,県内ヒバ林の大半は国有林に属している。ヒバは古くよりアスナロと呼ばれ,中部林業地帯ではアスヒと通称される樹名からもうかがえるように,〈明日(やがて)ヒノキになる木〉と見られていただけに,樹形・材質ともにヒノキに近似しているところから,現地ではヒバをもっぱらヒノキと称し,江戸時代の公記録にも漢字の檜を用いている。木材としてのヒバは建築用材のほか,ことに水湿に強い特質により堤防・橋梁などの土木用材として重用された。
→ヒバ
執筆者:所 三男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報