朝日日本歴史人物事典 「浦上弥五衛門」の解説
浦上弥五衛門
江戸中期の幕府の小納戸方役人。名は直方。将軍徳川吉宗から享保14(1729)年,吹上御苑に設けられた染殿で,後藤縫殿助らと共に延喜式の古法を復活して正式の色相を染め出すことを命ぜられ,苦心研究の結果,黄櫨綾,黄丹綾,深紫綾,浅紫綾,深滅紫綾,深緋綾,浅緋綾,深蘇芳帛,葡萄綾,韓紅花綾,深友子綾,橡綾,赤白橡綾,青白橡綾,深緑綾,中緑綾,深縹綾,浅藍色帛,浅黄綾の19種の色相の復元を行った。このときに染めた色見本は『式内染鑑』として幕府の文庫に納められたことが『徳川実記』有徳院殿御実記付録巻17に記されており,これによってそれまでの蘇芳を用いた茜染などが本来の茜染に復し,やや乱れていた民間染色も是正されるなど伝統染色の復興保存に大きな功績を残した。
(山邊知行)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報