蘇芳(読み)スオウ

デジタル大辞泉 「蘇芳」の意味・読み・例文・類語

す‐おう〔‐ハウ〕【×芳/×方/××枋】

マメ科の落葉小低木。葉は厚くつやがあり、羽状複葉。春、黄色い5弁花を円錐状につけ、さや状の赤い実がなる。心材赤色染料とする。インドマレー原産。すおうのき。
染め色の名。1の心材を煎じた汁で染めた、紫がかった赤色。蘇芳色。
蘇芳襲すおうがさね」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「蘇芳」の意味・読み・例文・類語

す‐おう‥ハウ【蘇芳・蘇方・蘇枋】

  1. 〘 名詞 〙
  2. マメ科の落葉小高木。インド、マレー原産。茎は高さ約五メートル。全体に刺(とげ)を散生。葉は二回羽状複葉で羽片は二〇~三〇個の小葉からなる。小葉は菱状楕円形で長さ約一・二センチメートル。春、葉腋に黄色の小さな五弁花を円錐形に密集してつける。果実は斜長楕円形の莢(さや)果で長さ七~一〇センチメートル。心材を蘇方(すおうぎ)と呼び赤色および紫系の染料に用いた。すおうのき。
    1. [初出の実例]「納琴四面、二前以蘇芳之」(出典:続日本後紀‐嘉祥二年(849)一一月壬申)
    2. 「沈の脇息〈略〉すわう、紫檀、夏冬ありがたし」(出典:宇津保物語(970‐999頃)菊の宴)
  3. 植物はなずおう(花蘇芳)」の通称。
  4. 植物「いちい(一位)」の異名。
  5. 染色の名。蘇芳の染料による名称。紅のやや紫がかった色相。蘇芳の木の樹皮、材に含む色素ブラジレインを灰汁(あく)媒染により発色、染色したもの。
    1. [初出の実例]「まつのいろはあをく、いそのなみはゆきのごとくに、かひのいろはすはうに、五色にいまひといろぞたらぬ」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月一日)
  6. (かさね)色目の名。諸説ある。公卿の束帯の下襲の冬の重ねの色としては表は白の瑩(みがき)、裏は濃打(こきうち)とも蘇芳打とも葡萄染(えびぞめ)ともいう。また、衣(きぬ)表裏の重ねとしては表は蘇芳、裏は赤あるいは黄の赤みのあるもの。蘇芳襲(すおうがさね)
    1. [初出の実例]「こきひとへがさねに、〈略〉すはうのうす物のうはぎなど」(出典:枕草子(10C終)三五)
  7. 歌舞伎小道具の染料にふのりを混ぜて生血に見せるもの。血そのものをもいい、また血に染まった手足、顔などをもいう。
    1. [初出の実例]「心中の時出た血は蘇芳ぢゃが」(出典:歌舞伎・唐崎八景屏風(1703)三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蘇芳」の意味・わかりやすい解説

蘇芳
すおう

赤色系の植物染料の一種。またその色名。アジア南部に産するマメ科(APG分類:マメ科)の小高木(学名Caesalpinia sappan L.)で、飛鳥時代から輸入され、その幹を切り砕いて煎(せん)じ、薬用や絹の染色に使われた。灰汁(あく)やミョウバンでアルミニウム媒染を行い、やや茶色みまたは紫色みのある赤色、鉄媒染して紫色に染めた。養老(ようろう)の衣服令、服色の項に、蘇芳は紫の次、緋(あけ)の上に掲げられていて、高位の者が用いる色であったことを示している。それは舶来品で貴重なものであったためであろう。鎌倉時代後期から琉球(りゅうきゅう)貿易によって盛んに輸入され、蘇芳染めの染織品が多くなった。襲色目(かさねいろめ)では、蘇芳は表裏とも蘇芳、下襲の場合に限って表白、裏蘇芳のものを蘇芳といい、また躑躅(つつじ)ということもあった。裏濃(うらこき)蘇芳は表薄蘇芳、裏濃蘇芳である。木工の発色にも用いられ、著名な正倉院の赤漆文欟木厨子(かんぼくずし)をはじめとする赤漆塗りの調度は、後世の赤漆と異なり、木地に蘇芳を塗ってから生漆をかけたもの。

[高田倭男 2019年10月18日]

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色名がわかる辞典 「蘇芳」の解説

すおう【蘇芳】

色名の一つ。蘇方、蘇枋とも書く。JISの色彩規格では「くすんだ」としている。一般に、マメ科スオウの樹皮や心材などを染料として染めた暗いみの赤のこと。スオウはインド、マレー半島が原産地。かさね色目いろめの名でもあり、表は薄い茶色、裏は濃い赤など。『延喜式えんぎしき』にも記述がある伝統色名で、平安貴族に愛用され高貴な色であったが、後世には紫染の代用となるなど一般化した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「蘇芳」の解説

蘇芳
すおう

蘇方・蘇枋とも。アジア南部に産するマメ科の小高木。薬効があり,幹材の煎汁は染料として用いた。媒染剤によって赤・紫・茶などに染められ,ことに江戸時代には紅染や茜染(あかねぞめ)のかわりに重用されたが,変色・退色しやすい欠点をもつ。色名としては青みをおびた紅色をいい,公家の装束のうち,襲色目(かさねのいろめ)では表は薄蘇芳,裏は濃蘇芳,織色では経糸(たていと)・緯糸(よこいと)とも紫あるいは赤みの二藍(ふたあい)のものをいった。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「蘇芳」の解説

蘇芳 (スオウ)

学名:Caesalpinia sappan
植物。マメ科の小低木,園芸植物

蘇芳 (スオウ)

植物。マメ科の落葉小高木,園芸植物。ハナズオウの別称

蘇芳 (スオウ)

植物。一位の別称

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