日本大百科全書(ニッポニカ) 「浮き人形」の意味・わかりやすい解説
浮き人形
うきにんぎょう
蝋(ろう)塗りの小さな人形の底に樟脳(しょうのう)をつけ、鉢などに盛った水に浮かべて走らせる水物玩具(がんぐ)。江戸時代に夏の遊びとして流行した。もとは中国の浮き鳥玩具で、西域地方では婦人が中元の日に、人形を水に浮かべて子を得るまじないにしたといい、これが伝えられたもの。江戸時代享保(きょうほう)年間(1716~36)刊の『絵本菊重(きくがさね)』には、五月節供の幟(のぼり)飾りのある店先に今様(いまよう)風俗の浮き人形が水鉢の中を回っている図がある。ビロード作りの猿に舟をこがせ、線香花火を持たせたものもあり、これらの浮き人形を五月節供の贈り物とした。明治以後はセルロイド製の小ボートなどが登場。現在も縁日の露店などでみられる。
[斎藤良輔]