中元(読み)チュウゲン

デジタル大辞泉 「中元」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐げん【中元】

三元の一。陰暦7月15日の称。もと中国道教から出た節日せちにちで、日本に伝来して仏家盂蘭盆会うらぼんえと混同され、この日は仏に物を供え冥福を祈る。→上元下元
1時期に、世話になった人などに品物を贈ること。また、その物。 秋》「―のきまり扇や左阿弥より/誓子
[類語]歳暮寸志

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精選版 日本国語大辞典 「中元」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐げん【中元】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 三元の一つ。陰暦七月一五日の称。元来、中国の道教の説による習俗であったが、仏教盂蘭盆会(うらぼんえ)と混同され、この日、半年生存の無事を祝うとともに、仏に物を供え、死者の霊の冥福を祈る。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「十五日〈略〉中元祝著之儀如例」(出典:実隆公記‐延徳二年(1490)七月一五日)
    2. 「中元(チウゲン)の祝ひに蓮を敷て飯をしていわふ」(出典:談義本・教訓不弁舌(1754)三)
  3. の時期の贈り物。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「所謂お中元(チュウゲン)贈答が盛に行はれる」(出典:東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉七月暦)

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改訂新版 世界大百科事典 「中元」の意味・わかりやすい解説

中元 (ちゅうげん)

陰暦7月15日。三元の一つ(上元)。道教では,人の罪を許す地官の誕生日とみなし,道士が経典を読んで亡者を済度した。また仏教では,《盂蘭盆経(うらぼんきよう)》等に見える目連(もくれん)尊者の孝行譚(たん)により,六朝後期以来,寺院では盛大な盂蘭盆会が開かれ,迷える亡者を済度した。このため後世,鬼節(鬼は亡霊の意)とも呼ばれる。こうして六朝の終りには,中元はすでに道教・仏教共通の祭日となり,家々では墓参に出かけ,各寺院では,供養を受けに訪れる諸霊の乗る法船を作り,夜それを焼いた。南宋以降,放河灯(灯籠流し)も行われ,元・明以後,荷葉灯や蓮花灯が作られて,子どもたちは夜,それに火をともして町をねり歩いた。現在,灯籠流しだけは一種の観光行事として行われる。
執筆者:

中元という語は,本来は単に7月15日のことを指したが,日本では近代に至りこれにちなむ贈答が慣習化した。近世までの文献にはこの日とくに贈答を行った記事はみられず,この贈答の成立には古くからあった盆礼,八朔(はつさく)礼,暑中見舞などの贈答習俗がかかわっている。とくに盆は祖霊の供養にとどまらず,生御霊(いきみたま)と称し存命の父母に子どもらが魚を贈る習慣があったが,これが親族間の供物のやりとりに,さらには近代の都市の発達による交際関係の拡大に伴い贈答の範囲も広がって,今日みるような歳暮(せいぼ)同様のふだん世話になる者への礼としての贈物となった。そのため盆礼本来の意味を失ったことから中元の称を当てるにいたったものと思われるが,今でも関西はじめ旧盆を行う東京以外の地域では,中元も盆に合わせ8月に贈るところが多い。こうした贈答が定着し始めたのは,一説には明治30年代といわれ,大売出しを催す百貨店等の商業主義も深く影響している。以後たのみの節供とも呼ばれ平素の恩顧に感謝する八朔の贈答も同じ意義をもつため廃れ,同様に暑中見舞も贈物を欠き書状のみで済ますようになった。
贈物
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中元」の意味・わかりやすい解説

中元
ちゅうげん

本来は、1月15日の上元、10月15日の下元と並ぶ中国の道教の三元信仰の一つで、陰暦7月15日をいう。善悪を判別し人間の罪を許す神(地宮)を祭る贖罪(しょくざい)の日とされたが、これが仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)と結び付いて祖先崇拝行事になった。日本ではこの日に、祖霊を祭り、半年生存の息災を祝って親類縁者が互いに訪問しあって交情を深め、仏に物を供え、死者の霊の冥福(めいふく)を祈り、祖霊との共食を意味して白米、麺(めん)類、菓子、果物などを贈る習わしがあり、江戸時代はとくに盛んに行われたが、現在はこの贈答を中元とよぶようになった。盆供(ぼんく)、盆歳暮(ぼんせいぼ)、盆見舞いなどとよぶ地方もあり、新盆の家には提灯(ちょうちん)を贈る風習や、盆ざかなと称してとくになまぐさものを使う例もみられる。近年は商業政策上、先輩、上役、上司、得意先などへ中元の贈り物をする風習がおこり、扇、手拭(てぬぐい)、食料、飲料などが用いられるが、夏季手当を「素麺(そうめん)料」として従業員に配る会社や商店などもみられる。

[丸山久子]

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普及版 字通 「中元」の読み・字形・画数・意味

【中元】ちゆうげん

旧七月十五日。盆。〔歳華紀麗、三、中元〕孟秋の、中氣の辰、門の寶蓋、獻ずること中元に在り。釋氏の(らんぼん)、此の日にんなり。

字通「中」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中元」の意味・わかりやすい解説

中元
ちゅうげん

太陰暦 1月15日の上元,10月15日の下元(かげん)とともに三元の一つで,陰暦 7月15日をいう。元来は中国の習俗で,善悪を分別し,人間を愛して罪を許す神の誕生日として祝われていた。仏教が中国に渡ってからインドの習俗である盂蘭盆会(うらぼんえ。→盂蘭盆)と習合して祖先崇拝の信仰に連なる行事となり,墓参,法要,灯籠流しなどが行なわれた。今日の日本で中元といえば,盂蘭盆会の仏前に供える品物を贈る習俗を意味し,かつては白米,麺類,菓子,果物のような食品を贈ったが,今日では供物の意よりはむしろ交際の意のほうが強くなり,食品以外の衣料品や什器などまで中元の贈答品として使われるようになった。

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百科事典マイペディア 「中元」の意味・わかりやすい解説

中元【ちゅうげん】

7月15日のこと。古く中国では上元(正月15日),下元(10月15日)とともに三元の一つとして祝った。日本ではそれが行事と結合して普及した。この日,祖先の供養とともに,親類知人を訪問し合い,1年の無事を喜び合ったが,やがてその際の贈答もしくは贈答品をも中元と呼ぶようになった。
→関連項目歳暮

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占い用語集 「中元」の解説

中元

暦の見方の1つ。各年月日時を干支で表した干支暦において、六十干支が一周した期間を一元として、上元・中元・下元と繰り返される。合わせて三元となるが、中元はその真ん中の期間のこと。

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世界大百科事典(旧版)内の中元の言及

【贈物】より

… 贈物をする習慣は古今東西を問わず広く存在する行為であるが,ヨーロッパなどでは歴史的に都市の発達した中世以降,贈与慣行は貨幣経済に駆逐され衰退していったといわれている。だが日本では貨幣経済の発展とも併存し,中世には武士の間で八朔(はつさく)の進物が幕府が禁令を出すほど流行したほか,中元歳暮は逆に近世以降の都市生活の進展によってより盛んになるなど特異な展開を示してきた。現代においても一方では前近代の虚礼,農村の陋習(ろうしゆう)といわれながらもいまだ根強く,H.ベフの調査(京都,1969‐70)によれば一世帯当り月平均8.1回の贈物をしその費用は月収の7.5%にのぼるという。…

【三元】より

…中国,三元は本来,歳・日・時の始め(元は始の意)である正月1日を指したが,六朝末期には道教の祭日である上元・中元・下元を意味し,それぞれ正月・7月・10月の15日を指すようになった。天官・地官・水官のいわゆる三官(本来,天曹(てんそう)すなわち天上の役所を意味したが,しだいにいっさいの衆生とすべての諸神を支配する天上最高の神となる)がそれぞれの日,すべての人間の善悪・功過を調査し,それに基づいて応報したという。…

※「中元」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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