日本大百科全書(ニッポニカ) 「清凉寺縁起」の意味・わかりやすい解説
清凉寺縁起
せいりょうじえんぎ
室町時代の絵巻。6巻。京都・清凉寺蔵。「釈迦堂(しゃかどう)縁起」または「清凉寺栴檀(せんだん)仏像縁起」ともよばれる。インドの抜嗟(ばつさ)(バンサ)国の優填(うてん)王が栴檀香木の釈迦如来(にょらい)像造像のことから、この像が西域(さいいき)、長安をへて江南に至り、宋の太宗のとき、日本の僧奝然(ちょうねん)がこれを模刻して請来し、このを本尊として清凉寺が建立されるに至った由来、ならびに本尊の霊験の数々を述べる。絵巻としてはインド、西域、中国、日本にわたる広い背景をもっている点、他に類例がない。第6巻末に、いま永正(えいしょう)12年(1515)に至るまでとあり、およそこのころの制作とわかる。絵は狩野元信(かのうもとのぶ)筆と伝えられ、画風的にも十分首肯できる。全巻金泥(きんでい)の地に極彩色を駆使した画面は、きわめて特徴的で、鮮烈な装飾性を訴える。
[村重 寧]