江南(読み)コウナン

デジタル大辞泉 「江南」の意味・読み・例文・類語

こう‐なん〔カウ‐〕【江南】

《「江」は河の意》河の南。

《「江」は揚子江の意》中国で、揚子江下流の南の地方。
愛知県北西部の市。木曽川の南岸にある。化学繊維園芸農業が盛ん。人口10.0万(2010)。
新潟市の区名。旧亀田町域・旧横越町域を含む。

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精選版 日本国語大辞典 「江南」の意味・読み・例文・類語

こう‐なん カウ‥【江南】

[1] (「江」は河の意) 河の南。
万葉(8C後)二〇・四三九七・題詞「在舘門江南美女作歌一首」
[2]
[一] (中国で「江」は揚子江の意) 揚子江の南の地方。
※仮名草子・竹斎(1621‐23)下「かうなんの野水天よりも碧也と作られしも、かくやと」
[二] (「江」を淀川の意に用いて) 大阪の旧市内。また、特に道頓堀の地をさす。
※浮世草子・男色大鑑(1687)八「江南(カウナン)浅瀬に水覚船(すいかくぶね)をよせて」
[三] (「江」を近江の意に用いて) 近江(滋賀県)の南部。南近江。
随筆・孔雀楼筆記(1768)三「樫田房州この時いまだ江南にあり」
[四] 愛知県北西部の地名。木曾川左岸にあり、古くから養蚕業が盛ん。現在は化学繊維の工業都市として発展。曼陀羅寺がある。昭和二九年(一九五四市制

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改訂新版 世界大百科事典 「江南」の意味・わかりやすい解説

江南[市] (こうなん)

愛知県北西部の市。1954年市制。人口9万9730(2010)。濃尾平野の北部,木曾川左岸に位置する。中世は稲木荘,村久野荘に属し,1320年代には後醍醐天皇の命で曼陀羅寺(正堂,書院などは重要文化財)が創建されている。近世に入り宮田用水,般若用水などができて新田開発が盛んに行われたが,近世後期以降は養蚕業が盛んになり,それに伴って生糸業,絹織物業が発達し,尾北地方の商工業の中心になった。第2次大戦後は化繊織物に転じ,カーテン地など室内装飾品織物の生産が多くなっている。また鉄工機械,コンクリート,食料品加工業などの大工場の立地,古知野や名鉄犬山線布袋駅前への大型店舗の進出,さらには大規模な住宅団地の造成などにより名古屋市の衛星都市化が進んでいる。農業は野菜栽培が中心。古墳時代中期の曾本二子山古墳があり,曼陀羅寺はフジの名所としても知られる。
執筆者:

江南 (こうなん)
Jiāng nán

中国,長江(揚子江)以南の地方,今の江蘇,安徽,江西省南部。この3省を通称して江南ということもある。狭義には江左を,広義には長江中下流域つまり淮河(わいが),漢水以南で南嶺以北の華中の地を指す。古代の江南は蛮夷が住み,火耕水耨(かこうすいどう)という遅れた農法に象徴される後進地であったが,晋室の南渡と共に急速に開発が進んだ。そして明・清にいたると江南は文化の中心地となり,清の乾隆帝による,〈江浙は人文の淵藪である〉との論評を生むに至るのである。
執筆者:

江南(埼玉) (こうなん)

江南(南唐) (こうなん)
Jiāng nán

(五代)

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百科事典マイペディア 「江南」の意味・わかりやすい解説

江南【こうなん】

中国,長江以南の地方。現在では長江下流南方のデルタ地帯の江浙平野一帯をさす。温暖多雨,中国の穀倉地帯で,稲作が盛ん。4世紀,五胡の侵入によって,東晋()が江南に建国,南北朝時代に開発が進んだ。唐は江南道を置いたが,貴州,広東,広西の3省を除く広い地域を含んだ。14世紀,はそのころ経済の中心地となっていた江南より興り,天下を統一した。
→関連項目魏晋南北朝時代六朝文化

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「江南」の解説

江南(こうなん)
Jiangnan

言葉の意味は長江以南の地域をさすが,狭義には江蘇省蘇州,松江,常州,浙江(せっこう)省の嘉興(かこう),湖州の五つの府を中心とする長江下流域の三角州地帯をいう。後漢末から三国時代にかけて華北から移住者が急増し,水田開発が開始された。宋代からは圩田(うでん),囲田,湖田など,湿地帯を堤防で囲んで干拓する新田開発が普及した結果,「蘇湖熟すれば天下足る」という俗諺(ぞくげん)に象徴されるように,この地域が中国でも有数の穀倉地帯に成長した。明清時代には手工業生産が盛んとなり,商業化・都市化が進んで経済的先進地域としての地位を堅持した。近代になるとその中心は上海に移ったが,現在もなお改革・開放経済発展の中心的地域としての役割を担っている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「江南」の意味・わかりやすい解説

江南
こうなん

埼玉県中北部,熊谷市南西部の旧町域。荒川の中流右岸に位置する。 1955年御正村,小原村の2村が合体して江南村と改称,1985年町制。 2007年熊谷市に編入。北部は沖積低地,南部は洪積台地で米作,野菜・果樹栽培が行なわれ,県の畜産研究所がある。台地には古代遺跡が点在し,千代の権現坂埴輪窯跡,小江川の高根横穴群や野原古墳群がある。 17世紀末から 18世紀の建築といわれる平山家住宅は国指定重要文化財。

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旺文社世界史事典 三訂版 「江南」の解説

江南
こうなん

中国の長江以南の意味であるが,広義には長江沿岸をも含める
永嘉の乱による晋の東遷以後,華北の貴族・農民が移住して六朝 (りくちよう) 文化をおこし,開発が進んだ。宋代には米作の中心として経済の最重要地域となり,明代以降は,綿・絹織物産業が発達,農村家内工業や,一部のマニュファクチュアも現れるまでに至った。

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世界大百科事典(旧版)内の江南の言及

【唐】より

…中国,五代十国の一つ。南唐,江南(国)ともいう。937‐975年。…

※「江南」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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