改訂新版 世界大百科事典 「焼付け塗料」の意味・わかりやすい解説
焼付け塗料 (やきつけとりょう)
baking finish
被塗物に塗って加熱すると塗膜が形成されるように作った塗料。加熱温度は,日本工業規格では100℃以上,アメリカ材料試験協会規格(ASTM),イギリス規格(BS)では強制乾燥(66℃以上)より高い温度と規定されている。焼付け塗料は,その焼付け温度で主要な橋架け反応(塗膜の所期性能が達成されるために必要とする樹脂高分子間の化学結合反応)がいちおう完了し,その温度以下(たとえば室温)ではもはや反応が進行しないと考えられるので,一般にその塗膜性質を長く保持することができる。加熱温度が高いほど,また加熱時間が長いほど橋架け反応が多く行われ,塗膜は硬くなる。焼付け温度と時間は塗装工程と焼付け炉の条件,塗膜性能により決定される。橋架け型塗料では塗膜形成主要素の分子量は比較的小さく,塗装後空気中の酸素,触媒,加熱により反応が進行して高分子化が行われ,連続膜を形成するので,得られた塗膜はもはや溶剤では溶解することができない。塗料本来の性質(溶解性,作業性,塗面状態,塗膜の物理的・化学的性質)を考慮すると橋架け型塗料の設計は好ましい点が多い。表に焼付け塗料の種類,組成,特性を示す。
執筆者:大藪 権昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報