蒸発(読み)じょうはつ(英語表記)evaporation; vaporization

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

蒸発
じょうはつ
evaporation; vaporization

液体が表面だけから穏やかに気体 (蒸気) に変る現象。与えられた温度において,蒸発は気相部分の蒸気圧がその温度での飽和蒸気圧になるまで進行して平衡に達する。温度が高いほど蒸発が激しいのは高温ほど飽和蒸気圧が大きいからであり,風が吹くと蒸発しやすいのは液体の表面付近の蒸気を除いて蒸気圧を小さくするからである。液体を蒸発させて気体とするには熱を加えなければならず,この潜熱蒸発熱または気化熱といい,その大きさは温度によって異なる。蒸発熱がほかから得られないときには,液体自身から熱が奪われて,その温度が下がる。発汗作用は蒸発熱を利用した体温の調節作用である。

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デジタル大辞泉の解説

じょう‐はつ【蒸発】

[名](スル)
液体がその表面から気化する現象。「水分が蒸発する」
人がいつの間にかその場からいなくなること。また、人が家を出て行方不明になること。「突然妻が蒸発する」
[補説]書名別項。→蒸発

じょうはつ【蒸発】[書名]

夏樹静子の長編推理小説。副題「ある愛の終わり」。昭和47年(1972)刊行。翌年、第26回日本推理作家協会賞を受賞。

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百科事典マイペディアの解説

蒸発【じょうはつ】

液体または固体の表面で気化が起こる現象。固体の場合には特に昇華といい,液体内部からも気化する場合は沸騰という。蒸発は温度が一定ならば,その蒸気圧が飽和蒸気圧に達するまで進行し平衡状態に至る。化学工業では溶液を加熱することによって濃縮したり,さらに晶質を晶出させる操作を蒸発と呼んでいる。
→関連項目蒸発缶

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世界大百科事典 第2版の解説

じょうはつ【蒸発 evaporation】

液体,または固体の表面から気化が起こる現象。ただし固体の場合は昇華と呼んで区別するのがふつうである。液体からの蒸発は,沸点以下の温度で起こり,気相の圧力(蒸気圧)が一定の値(飽和蒸気圧)になるまで続き,そこで気相‐液相平衡に達する。温度が沸点に達すると,液体内部からも気化が起こるが,これは沸騰と呼ばれる。昇華の場合,飽和蒸気圧に当たるものは昇華圧と呼ばれる。固体の場合は沸騰に対応する現象はほとんど見られない。

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大辞林 第三版の解説

じょうはつ【蒸発】

( 名 ) スル
液体の表面から気化が起こる現象。広義には沸騰を含む。
人がどこかへ行方をくらますこと。 「父親が-した」 〔An English-Japanese Dictionary of the Spoken Language(1876年)に evaporation の訳語として jôhatsu とある〕

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

蒸発
じょうはつ
vaporization

気化が液体の表面からおこる場合が蒸発であり、液体の内部からもおこる沸騰(ふっとう)とは区別する。沸騰は一定の圧力のもとでは特定の温度(沸点)でおこる。つまり飽和蒸気圧と外圧(大気圧など)が等しくなったときにおこるが、蒸発はいかなる温度でもおこる。固体表面からも蒸発がおこるが、こちらはむしろ昇華とよばれることが多い。植物の葉面からの水分の蒸発は、蒸散といわれることもある。
 蒸発は表面積が大きいほどおこりやすくなる。しかし飽和蒸気圧のもとでは、蒸発速度と凝縮速度が等しくなるので、差し引き蒸発はゼロとなる(雨の日に洗濯物が乾きにくいのはこのためである)。表面積を大きくし、かつ蒸発面の直上の飽和した空気を除くと、蒸発が速くなることは予測どおりである。水を利用したファンクーラーなどは、このようにして蒸発を盛んにさせて熱を大気から奪うことに努めているのである。
 結晶を析出させたり、溶液を濃縮したりするのが必要な化学実験においては、開口部の広い蒸発皿、あるいは結晶皿が用いられる。通常は磁製であるが、ガラス製や石英製のもの、あるいはプラスチックや白金製のものもあり、液性に応じてそれぞれに使い分けている。真空ポンプなどで減圧にすることも有効であり、高温では不安定となるものの濃縮には、減圧下での蒸発濃縮がきわめて有効である。[山崎 昶]

気象

evaporation 水1グラムの蒸発には580カロリーもの熱を必要とする。このため、地球上の暖かい海面から寒地へと動く空気に含まれる水蒸気は、大量の熱を運ぶことになる。雲ができる際にはこの熱が放出され、空気は昇温し、さらに浮力が与えられる。水面からの蒸発の速さは、水面と、接する空気の蒸気圧差に比例する。蒸発によって水面は冷却され、熱の補給がなければ蒸発速度が落ちる。もし水が深ければ、冷たくなった表面水は沈み、下の暖かい水と入れ替わる。塩分を含んだ海水からの蒸発は淡水に比べてわずかに遅く、雪や氷からの蒸発は、同じ温度であっても水面より小さい。地球表面での蒸発の大部分は海面からと考えられており、いろいろな蒸発量推定が試みられているが、正確な見積りはきわめて困難である。[篠原武次]

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精選版 日本国語大辞典の解説

じょう‐はつ【蒸発】

〘名〙
① 液体がその表面で気化すること。また、ある物体から気体が発生すること。また、その現象。
※遠西観象図説(1823)中「地球より常に蒸発する所の気あり。これを游気と云ふ」
※新聞雑誌‐二三号・明治四年(1871)一二月「総て石炭坑は水素瓦斯を蒸発し燈火を引て一時に焼出し」
② 消えてなくなること。消滅すること。見えなくなること。
※案内者(1922)〈寺田寅彦〉「毎日同じ事を繰返して居る間にあらゆる興味は蒸発してしまって」
③ 人知れずその場からいなくなること、また、家出したまま行方不明になることを俗にいう。
※羽なければ(1975)〈小田実〉一七「男の蒸発いうのがこのごろはやっとるそうやないか」

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世界大百科事典内の蒸発の言及

【気化】より

…物質が液体または固体から気体に変化する現象。液体から気体になることを蒸発,固体から気体になることを昇華と呼んで区別することもある。蒸発や昇華は液体や固体の表面からの気化であるが,液体の温度が上がり,圧力で決まる一定の温度(沸点)に達すると,液体の内部からの気化が起こる。…

※「蒸発」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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