改訂新版 世界大百科事典 「物価調整減税」の意味・わかりやすい解説
物価調整減税 (ぶっかちょうせいげんぜい)
消費者物価の上昇により,所得税などの実質負担は実質所得が増えなくとも累進率と課税最低限を通じて増加するが,所得税の自然増収のうち実質上の負担増は減税すべきであるという考え方ないし,そうした考え方に基づいて行う減税をいう。1962年の税制調査会答申は〈所得税の本来の負担は,実質所得に対する負担を中心に考えらるべきである〉という見地から,上述の考え方を示した。そのときは自然増収の一定割合という方式をとったが,その後は課税最低限引上方式と税率表改訂方式がとられた。しかし物価調整減税をやれば,消費が刺激されてかえってインフレが加速されるという批判がある。また日本の所得税における物価調整減税は60年代を通じ過度に行われたため,所得税の所得再分配機能がゆがめられ,その結果,社会資本充実に向けられる財源が不足し,社会資本の相対的不足をもたらしたという批判もある。この問題は,インフレ期には日本のみならず世界各国で論議されている。
→所得税
執筆者:古田 精司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報