国や地方公共団体の税収は,税制の変更が行われなくても,通常,名目的な賃金や企業利潤等の上昇により前年度に比べて増加する。これを自然増収と呼び,制度改正に伴う税収の増加と区別している。これは実質的な経済成長だけでなくインフレーションによっても生じるわけであり,この面からは経済の自動的安定化(ビルトイン・スタビライザー)の効果があるとされている。自然増収による税収の増加率を名目国民総生産の増加率(名目経済成長率)で割ったものは,税収のGNP弾性値と呼ばれている。所得税の場合,累進税率により課税されているため名目賃金等の上昇により平均的な税率は上昇し,弾性値は一般に1より大きくなる。これに対し,間接税の場合は,数量や重量を基準に課される従量税が含まれるため,一般に弾性値は1より小さい。税収全体では,高度成長期には1.4前後の高い値であったが,1973年秋の第1次石油危機以後の安定成長下では低い値を示すことが多くなっている。
予算編成においては自然増収の予測が重要な役割を果たす。高度成長期には大幅な自然増収により,増大する財政需要にこたえながら年々減税を行ってきたが,第1次石油危機以降,安定成長に移行し,自然増収は大きく望めなくなり,大幅な国債依存の財政が継続している。また逆に,予算編成時に予期できなかった大きな不況により自然減収となって,歳入欠陥を生じることもある。
執筆者:吉田 和男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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