物部為里(読み)もののべ・ためさと

朝日日本歴史人物事典 「物部為里」の解説

物部為里

没年:建保1頃(1213)
生年:生年不詳
鎌倉初期の番匠大工東大寺大勧進俊乗坊重源 に登用され,桜島国宗と共に東大寺の伽藍再建に活躍した。大仏殿造営の功績により従五位下・伊勢権守の位官を授けられた。文治2(1186)年から建久8(1197)年まで現役であったことが確認できる。建仁3(1203)年,東大寺南大門仁王像の造像に結縁し,晩年には重源への報恩として東大寺大湯屋の湯田として私領田を寄進している。木工寮などの官工系の工匠であった可能性が大きい。のち1220~30年代に,高野山や京都の諸寺の造営・修理に名を現す伊勢権大夫物部為国は為里の系類に属す番匠と推定される。

(永井規男)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「物部為里」の解説

物部為里 もののべ-ためさと

?-? 鎌倉時代の大工。
東大寺の工匠で,重源(ちょうげん)の指示うけ,桜島国宗とともに大仏殿再建にあたる。建久6年(1195)に落成。この功により伊勢権守(いせごんのかみ)に任じられた。のち,高野山奥院や平等院の修理・造営にくわわった。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の物部為里の言及

【桜島国宗】より

…生没年不詳。1180年(治承4)焼失し重源(ちようげん)が大勧進職となって再建した東大寺の工事を,宋人の陳和卿(ちんなけい),日本人工匠の物部為里(もののべのためさと)とともに担当した。86年(文治2)4月10日,為里とともに周防の杣山(そまやま)に入って再建用の材木を探し,90年(建久1)10月26日に駿河権守に任命された。…

【物部為国】より

…また1239年(延応1)上棟の東福寺仏殿の大工をつとめていることを示す記録もあり,鎌倉時代に宋からもたらされた新様式である大仏様(天竺様)の技術を身につけていたのではないかと思われる。これよりやや早い時期に同姓で伊勢権守(東大寺大工)の物部為里(ためさと)も活躍しており,同一人とする説もあるが,為国はその子と考えてよかろう。大工の個人的活動がほとんど不明な時代にあって,ようすのわかる貴重な存在である。…

※「物部為里」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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