日本大百科全書(ニッポニカ) 「田原結節」の意味・わかりやすい解説
田原結節
たわらけっせつ
心臓の自律性の収縮運動をつかさどる刺激伝導系を構成する要素の一つで、結合組織に埋まった特殊な筋線維群である。解剖学名では房室結節という。田原結節はアショフ‐田原結節ともよばれるが、名の由来は、病理学者の田原淳(すなお)がドイツの病理学者のアショフLudwig Aschoffの研究室で1905年に発見したことによる。この結節は、右房の冠状静脈洞の開口部上方で、心房近くに存在する長さ約5ミリメートルほどの細い線維の塊である。洞房結節(キース‐フラック結節)から出た収縮興奮は心房筋を収縮させ、その興奮は田原結節に達する。田原結節の線維は、房室束(ぼうしつそく)(ヒス束)と、その先端のプルキンエ線維に連絡し、この線維は心臓内壁にある乳頭筋に著しく分布する。なお、刺激伝導系とは、洞房結節、田原結節、房室束、プルキンエ線維によって構成される系をいう。
[嶋井和世]