由無(読み)よしない

精選版 日本国語大辞典 「由無」の意味・読み・例文・類語

よし‐な・い【由無】

〘形口〙 よしな・し 〘形ク〙
① そうする理由がない。いわれがない。根拠がない。
源氏(1001‐14頃)若菜上「やんごとなきまづの人々おはすといふ事は、よしなき事なり」
② 手掛かりがない。手段・方法がない。しかたがない。すべない。
書紀(720)神代下(兼方本訓)「時に、弟、已に鈎を海の中に失ひて訪獲(とふらひもとむ)るに因(ヨシ)(な)し」
③ 無関係である。ゆかりがない。縁がない。
※枕(10C終)二五「忍びやかに門たたけば、胸少しつぶれて、人出して問はするに、あらぬよしなき者の名のりして来たるも」
風情がない。また、家柄・身分・教養などがない。
※紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一一日「扇など、みめにはおどろおどろしく輝やかさで、よしなからぬさまにしたり」
⑤ そのかいがない。むだ骨折りである。
※竹取(9C末‐10C初)「愚かなる人は、ようなきありきはよしなかりけりとて」
⑥ しなくてもよい。いわなくてもよい。つまらない。
古今著聞集(1254)二〇「げにはよしなきことをもいひつる物かな」
謡曲・隅田川(1432頃)「由ない長物語りを申し候ふほどに、舟が着きて候」
⑦ よくない。よこしまである。また、いかがわしい。
和泉式部日記(11C前)「よからぬ人々文おこせ、又身づからもたちさまよふにつけても、よしなき事の出で来るに」

よし‐な【由無】

(形容詞「よしない」の語幹) 無益なさま。つまらないさま。かいのないさま。どうしようもないさま。多く感動表現に用いる。
※新撰六帖(1244頃)五「通ひ来とよそには人に見えながらよしなや何とつれなかるらん〈藤原為家〉」

よし‐なし【由無】

〘形動〙 理由のないさま。わけのわからないさま。
※催馬楽(7C後‐8C)我が門を「与之奈之(ヨシナシ)に とさんかうさん 練る男 由こさるらしや 由こさるらしや」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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