日本大百科全書(ニッポニカ) 「男の首」の意味・わかりやすい解説
男の首
おとこのくび
La Tête d'un Homme
フランス推理小説界を代表するG・シムノンの初期佳作の一つ。1931年作。『或(あ)る男の首』『モンパルナスの夜』などの邦題名もある。サンテ監獄の外に通じる扉が、なぜか開けっ放しになっていた。死刑囚第11号は誘われるようにそこから外へ……。実はメグレ警部がその死刑囚の無実を信じて、わざと脱獄させたものである。警部と部下との根気のよい尾行が始まる。そしてついに重要容疑者に突き当たるが、彼はメグレ警部を嘲笑(ちょうしょう)するように、大胆に立ちふるまう。警部と容疑者の息詰まる心理的対決が始まる。心理犯罪小説の名作であり、1932年にはデュビビエ監督によって映画化され、ヒットした。
[梶 龍雄]
『宮崎嶺雄訳『男の首・黄色い犬』(創元推理文庫)』