日本大百科全書(ニッポニカ) 「異質倍数体」の意味・わかりやすい解説
異質倍数体
いしつばいすうたい
異なる染色体組(ゲノム)が重なって、倍数性の染色体をもつ生物個体をいう。構成ゲノムの数によって異質三倍体、異質四倍体などという。近縁種間にみられる倍数種の多くはこれに属する。たとえば、一粒系コムギのゲノムはAAであるが、二粒系コムギではAA、BBという異質四倍体、さらに普通系コムギではAA、BB、DDという異質六倍体である。これに対し同一ゲノムが倍加して生じた個体を同質倍数体という。同一ゲノムが過剰に重合すると、かえって生活機能を阻害して生存上不適当となるが、異質倍数体では稔性(ねんせい)(生物が種子や卵子をつくる能力をもつこと)が高まり、完全な独立種をつくる特性をもっている。異質倍数体と同質倍数体を総称して倍数体とよぶ。
[吉田俊秀]