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染色体 せんしょくたいchromosome

翻訳|chromosome

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

染色体
せんしょくたい
chromosome

細胞の核内に一定数存在し,塩基性色素で染色され,遺伝子であるデオキシリボ核酸 DNAを含む。静止核では細く,曲りくねった状態にあるので染色糸と呼ばれることもある。核分裂の中期,後期では各染色体は1個ずつの動原体を有し,V字状,L字状,J字状,棒状,点状が区別され,この区別は核型分析に利用される。中期,後期の1本の染色体はさやに包まれ,内部は基質でその中に2~4本の染色体糸が螺旋状になって存在している。体細胞では染色体数は生殖細胞の2倍数存在し,同形,同大の相同染色体が1対ずつある。そのため体細胞の染色体数はヒトは 46,サルは 48,ウマでは 60と偶数個である。

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知恵蔵の解説

染色体

細胞の核内にあり、細胞分裂の際に棒状の構造体として観察される遺伝情報の担い手で、塩基性色素に濃く染まるところから染色体の名がある。分裂期以外は、核内に一様に分散し染色質という構造をとる。ヒストンと呼ばれるたんぱく質のまわりにDNAの二重らせんが巻き付いたヌクレオソームを基本単位として、これにほかのたんぱく質も加わって何段階にも連結して染色体をつくる。真核生物の体細胞は、同じ形をした2つ1対の常染色体を何組かと1組の性染色体をもつが、その形と数は生物の種類によって決まっていて、種の判別に用いられる。たとえばヒトでは、常染色体22組44本とXXまたはXYという性染色体2本の計46本をもつ。減数分裂によってつくられる生殖細胞は、体細胞の染色体の半数セットを受け継ぐ。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

せんしょく‐たい【染色体】

細胞核有糸分裂のときに現れる棒状の小体。塩基性色素に染まりやすい。染色質染色糸となり、さらに螺旋(らせん)状に縮まって短く太くなったもの。数・形は生物の種ごとで定まっていて、遺伝や性の決定に重要な働きをする。また広く遺伝情報を伝えるものをいう。

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百科事典マイペディアの解説

染色体【せんしょくたい】

元来は細胞核の中に含まれ,細胞分裂が始まると,塩基性色素によく染まるひも状の構造を指したが,その後の分子遺伝学的な知見に基づき,現在では,細胞内の遺伝情報を担うDNA(およびヒストンなどのタンパク質分子が結合した)の巨大な糸状分子を指す。
→関連項目遺伝的組換えウェルナー症候群核(生物)核型癌抑制遺伝子出生前診断シュトラスブルガー染色体地図倍数性ボベリ連鎖

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栄養・生化学辞典の解説

染色体

 動物細胞や植物細胞が分裂するとき,核に出現する塩基性色素に染まる棒状の構造物.遺伝子の集合体.

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世界大百科事典 第2版の解説

せんしょくたい【染色体 chromosome】

もともとは,細胞分裂時に現れる,塩基性色素によく染まる糸状構造体のことをいったが(W.ワルダイアー,1888),T.H.モーガンらの研究により,この構造体に遺伝子が線状に配列していることがわかってから,遺伝学的には,個々の連鎖群に対応する遺伝的単位,すなわち線状に配列した一連の遺伝子をさすようになった。また,細胞学的には細胞分裂時にみられる糸状構造体に限らず,中間期の核において極度に伸びきって糸状構造として認められなくなっているものや,細菌の核域,ウイルス粒子,真核生物のオルガネラなどに存在する個々の遺伝情報分子をも染色体と呼ぶようになってきている。

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大辞林 第三版の解説

せんしょくたい【染色体】

真核生物の細胞内にあって有糸核分裂の際に出現し、塩基性色素によく染まる小体。染色質が分裂時に染色糸となり、さらにこれが螺旋らせん状に幾重にも巻いて太くなったもの。生物の種類や性によってその数・形は一定であり、遺伝や性の決定に重要な役割を果たす。現在では染色質も、原核生物のゲノムやプラスミドなども染色体という。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

染色体
せんしょくたい
chromosome

生物の細胞内に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)を主成分とした自己増殖性のある小体。染色体の基本構造は、ウイルスやバクテリアなどのような下等生物から高等動植物に至るあらゆる生物を通じ同じである。下等な原核生物では二重螺旋(らせん)構造をしたDNAが裸の形で細胞内に含まれているが、高等な真核生物の染色体はDNAのほかにリボ核酸(RNA)、塩基性タンパク質(ヒストン)、酸性タンパク質および少量の脂質や多糖類が加わり、複雑な長い紐(ひも)状構造(染色糸)となって細胞核内に含まれている。細胞分裂が始まると、核をもたない原核生物ではDNAがそのまま二分して2細胞に移行するが、核をもつ細胞(真核生物)では染色糸は短縮して塩基性色素によく染まり、光学顕微鏡で観察可能な小体に発達する。この小体の数と形は生物の種類により一定で、従来これを染色体とよんだ(狭義の染色体)。しかし、最近では原核生物の遺伝物質(DNA)も染色体とよんでいる。真核細胞における分裂期の染色体は、ヘマトキシリンやカーミンなど塩基性色素によく染まるのでその名がある。休止核の染色糸は光学顕微鏡では判別できないが、電子顕微鏡でみると太さ約0.3マイクロメートルの細長い糸状構造として観察される。この時期にDNAの複製がおこり、分裂中期にみられる染色体はつねに2本の娘(じょう)染色体からなっている。分裂後期では染色体は1本ずつの娘染色体に分かれ、それぞれ娘細胞に入る。
 分裂中期の染色体の大きさは生物の種類によって多少違うが、ヒトの細胞を例にとると、染色体の太さ(直径)は約1~2マイクロメートル、長さは数マイクロメートルから十数マイクロメートルである。染色体の数と形は、生物の種類により一定で、生物種の重要な特徴となっている。
 染色体の形は生物の種類により一定しており、それを核型という。体細胞は形の等しい2組の染色体(相同染色体)から成り立っている。1組は母方(雌親)から、他方は父方(雄親)から由来したものである。一般に体細胞の染色体数は2nで、生殖細胞のそれはnで表される。ヒトを例にとって染色体の構成を調べてみると、体細胞の染色体(2n)は46個で、そのうち23個(n)は卵子から、ほかの23個(n)は精子由来である。23対のうち不等の1対は性決定に関与する性染色体で、大きいほうをX、小さいほうをYで表す。性染色体以外の22対の染色体を常染色体とよび、これらは大きさと形によりAからGの7群に分類されている。従来の染色法では各群内の個々の染色体対(つい)の識別は困難であったが、最近、発展したバンド染色法ですべての染色体対の識別が可能となった。
 染色体上の遺伝子を相対的距離によって配列し、図式によって表したものを染色体地図という。互いに連関して遺伝する任意の二つの遺伝子を組換え価から直線上に配列してみると、遺伝子間の相対的な距離を示す地図が描かれる。これを連鎖染色体地図とよぶ。染色体地図には染色体の転座、重複、欠失などの染色体異常と遺伝子の位置を対応させたり、異種間の雑種体細胞をつくって雑種細胞における染色体の脱落分離から染色体と遺伝子を対応させる細胞学的染色体地図がある。最近、ヒトとマウスの雑種細胞からヒトの詳細な細胞学的染色体地図がつくられている。双翅(そうし)類の唾液腺(だえきせん)染色体(唾腺染色体)の横縞(よこじま)模様と遺伝子の位置を結び付けたものを唾腺染色体地図とよぶ。
 染色体の逆位や転座などの異常が、ある生物種の自然集団中につねにある割合で含まれていることがある。これを染色体多型という。また、同一種でありながら生息する地域で異なった核型を示すこともあり、これを地理的変異という。これらはいずれも生物種の分化や進化の要因となっている。
 染色体を最初に観察したのは1842年ネーゲリNgeliであり、その後1875年にストラスブルガーStrasburger、1880年にフレミングFlemmingなどによって確かめられた。染色体chromosomeという名称は、1888年ワルダイヤーWaldeyereによるもので、ギリシア語のchroma(色)とsoma(体)から名づけられた。それを染色体と訳したのは1892年(明治25)石川千代松である。[吉田俊秀]

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世界大百科事典内の染色体の言及

【遺伝】より

…いろいろの遺伝様式のおもな特徴と相互関係を表1にまとめてある。
[相同染色体と対立遺伝子]
 核には決まった数の染色体があり,一つ一つの核内遺伝子(以下,遺伝子という)はいずれか1本の染色体の一定の部分を占めている。いいかえれば,遺伝子が線状に配列したものが染色体である。…

【遺伝学】より


[細胞遺伝学cytogenetics]
 メンデルが遺伝の法則を発見したころからそれが再発見されるまでの19世紀最後の四半世紀は,細胞学がメンデルの法則,したがって遺伝学そのものを生物学へ受け入れるための準備をした期間である。この間,受精において卵と精子の核が合体すること,細胞分裂において染色体が縦裂し,その半分ずつが娘細胞に分かれて入ること,卵と精子から同数の染色体が接合体にもち込まれることなどが知られてきた。そして,メンデルの法則の再発見後間もなくサットンW.S.Sutton(1902)などによって成熟分裂(減数分裂)における染色体数の半減が発見されるに及び,メンデル因子と染色体の行動に完全な並行関係がなり立った。…

【遺伝子】より

…このような遺伝因子はメンデル因子,または単に因子とよばれていたが,W.L.ヨハンセン(1909)の提案した遺伝子という語がしだいにこれにとって代わるようになった。 サットンW.S.Sutton(1902)らはいち早く成熟分裂における染色体の行動がメンデル因子の行動と一致することを明らかにしたが,さらに,1910年に始まるT.H.モーガンらのキイロショウジョウバエの研究により,遺伝子は染色体に線状に配列して連鎖群を形成しており,一つの遺伝子は特定の染色体の特定の部位を占めていることがわかった。このような研究により,それまで仮想的な存在であった遺伝子が物質的基礎をもつことになり,その構造と機能を物質的に研究する道が開けた。…

【遺伝病】より

…この病気は,メンデルの遺伝の法則にしたがうので,メンデル遺伝病Menderian diseaseとか古典的遺伝病とか呼ばれる。ヒトの染色体は46本あり,うち44本は男女同じで常染色体と呼ばれ,残り2本は,男でXY,女でXXの構成をもち,性染色体と呼ばれる。メンデル遺伝病には次のような遺伝形式をとるものがある。…

【細胞】より

…明らかに原始的とされる原核細胞は,細胞の大きさが1μm程度で小さく,通常細胞壁の形成によって決まる単純な形態をとっており,一部を除いて原形質にはとくに発達した構造が見あたらない。原核細胞と名付けられるとおり,核膜によって囲まれる原形質の区分(核質とよぶ)がなく,遺伝子を配列する染色体は,ほとんどDNAの1分子と考えられ,核様体とよばれる構造をとって原形質中に広がっている。原始的な細胞生物である細菌類は,すべて原核細胞に属しているが,なかでも最小の細胞といわれる球形のマイコプラズマは直径0.1~0.25μmの範囲にあり,細胞壁はなく,細胞膜のみによって囲まれる原形質には微細構造がきわめて乏しく,最小の染色体(長さ500μmにも達しない環状DNA)と最少数のリボソームが含まれるにすぎない。…

※「染色体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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