石綿症(読み)せきめんしょう(英語表記)asbestosis

翻訳|asbestosis

改訂新版 世界大百科事典 「石綿症」の意味・わかりやすい解説

石綿症 (せきめんしょう)
asbestosis

塵肺(じんぱい)の一種。石綿肺ともいう。石綿アスベスト)は繊維状のケイ酸塩鉱物の総称で,ひろく工業原料として利用されているが,近年,造船,建設,自動車ブレーキライニングなど石綿使用分野が急速に増加し,職業的にあるいは非職業的に,石綿曝露(ばくろ)の機会が増加してきている。石綿症は,呼吸細気管支炎と肺胞炎に始まり瀰漫(びまん)性の肺繊維症をきたし,また壁側胸膜の肥厚(胸膜プラークと呼ばれる)と石灰化を伴う病気である。石綿症の進行は潜行性で緩徐であり,初期の自覚症状は痰を伴わない咳と労作時息切れである。痰の中の含鉄小体(または石綿小体)が石綿粉塵吸入者にみられる。石綿症には,肺癌と胸膜・腹膜中皮腫の合併が知られており,最近ではこれらの悪性腫瘍死因となることが多い。日本では石綿は輸入に依存しているが,その消費量は少なくなく,したがって石綿による健康障害の予防対策として,発塵防止と代替材料の開発が重要である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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