悪性腫瘍(読み)アクセイシュヨウ

デジタル大辞泉 「悪性腫瘍」の意味・読み・例文・類語

あくせい‐しゅよう〔‐シユヤウ〕【悪性腫瘍】

腫瘍のうち、細胞が変異して限りなく増殖を続け、周囲の正常な組織を破壊するもの。癌腫肉腫とに分けられる。悪性新生物。癌。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「悪性腫瘍」の意味・読み・例文・類語

あくせい‐しゅよう‥シュヤウ【悪性腫瘍】

  1. 〘 名詞 〙 腫瘍の細胞そのものの増殖力が強く、周囲の組織へ蔓延(まんえん)浸潤し、または他の臓器へ転移するもの。ガンはその代表例。
    1. [初出の実例]「悪性腫瘍(アクセイシュヤウ)らしい処は少しもありません」(出典カズイスチカ(1911)〈森鴎外〉)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「悪性腫瘍」の意味・わかりやすい解説

悪性腫瘍
あくせいしゅよう

悪性の特徴をもつ腫瘍の総称。腫瘍(新生物neoplasm)とは、体の中に生じた異常な細胞が本来の制御を逸脱して、自律的に増殖し続けることによって生じる腫瘤(しゅりゅう)、病変をさす。腫瘍は良性のものと悪性のものとに大別され、悪性腫瘍は一般に「がん」と同義語として用いられる。両者を比較すると、悪性腫瘍には次のような特徴が認められる。

(1)悪性腫瘍は良性腫瘍に比して、正常な細胞、組織との形態の変化の度合い(異型性)が強い。

(2)悪性腫瘍は良性腫瘍に比して発育速度が早く、良性腫瘍はほとんど再発しないのに対して、悪性腫瘍はしばしば再発する。

(3)良性腫瘍は周囲の組織を押しのけて増殖する「膨張性(拡張性)発育」の形をとるのに対して、悪性腫瘍は組織や細胞の間に浸潤して広がる「浸潤性発育」の形をとることが多い。

(4)良性腫瘍では、原発部位から離れた場所に運ばれて新たに発育する「転移(遠隔転移)」が起こらないのに対し、悪性腫瘍ではしばしば転移が起こる。

(5)良性腫瘍は全身への影響がしばしば軽度であるのに対し、悪性腫瘍は、発生した臓器ばかりでなく全身に重篤な影響を及ぼし、やがては生命を脅かす。

 悪性腫瘍はさらに、皮膚や粘膜、分泌腺(せん)など上皮性細胞の性格をもつ「癌(がん)(がん腫)carcinoma」と、血管や筋肉、脂肪、骨、軟骨、神経、結合組織などの非上皮性細胞に由来する「肉腫sarcoma」に分けられる。造血細胞に由来する白血病リンパ腫広義には肉腫に含まれる。まれに上皮、非上皮双方の腫瘍細胞成分からなる混合性腫瘍もみられる。「がん」という呼称は、狭義にはがん腫のみをさすこともあるが、病理学的にはがん腫、肉腫を包括した悪性腫瘍を意味し、これらの総称として用いられることが多い。

[渡邊清高 2018年1月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「悪性腫瘍」の意味・わかりやすい解説

悪性腫瘍【あくせいしゅよう】

身体内の組織細胞が生体の生理的支配と無関係に,自律性をもって発育するものを腫瘍というが,特に周囲の組織を破壊して発育し,発生原因を除去しても増殖を続け,血行やリンパを介して他の臓器に転移し,生命の危険を招くものを悪性腫瘍という。上皮性の,非上皮性の肉腫がこれに含まれる。
→関連項目カポジー肉腫骨肉腫細胞診試験切除腫瘍マーカー低血圧転移(医学)バイオプシーブレオマイシンマイトマイシン網膜芽細胞腫吉田肉腫

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「悪性腫瘍」の意味・わかりやすい解説

悪性腫瘍
あくせいしゅよう
malignant tumor

一般に発育が速く,周囲の組織を破壊し,血液やリンパによって他の場所に転移しやすい腫瘍をいう。上皮系の皮膚,粘膜,腺などから発生するものが癌腫,非上皮系の結合組織,骨,軟骨,リンパ節などに発生するのが肉腫で,両者を合せて一般的にと称し,人口動態統計では悪性新生物ともいう。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「悪性腫瘍」の意味・わかりやすい解説

悪性腫瘍 (あくせいしゅよう)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

栄養・生化学辞典 「悪性腫瘍」の解説

悪性腫瘍

 悪性新生物,がんともいう.増殖,浸潤,転移などを特色とし,宿主に害を与え,多くの場合死に至らしめる細胞群.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の悪性腫瘍の言及

【異所性ホルモン産生腫瘍】より

…1962年,副腎皮質機能亢進症状を伴った肺癌の患者の腫瘍組織中に,本来は脳下垂体から分泌されるはずの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌が証明されたことから,異所性ホルモン産生腫瘍の概念が確立された。 肺癌の場合が圧倒的に多いが,カルシノイド症候群,甲状腺癌,膵癌,肝臓癌など種々の悪性腫瘍にみられる。作られるホルモンは,ACTHのほか,バソプレシン,カルシトニン,ヒト絨毛(じゆうもう)性ゴナドトロピン(hCG)など多様であり,複数のホルモンを同時に産生している腫瘍もある。…

【癌】より


【癌の種類】
 異常な細胞が過剰に増生してつくる組織の塊を,腫瘍tumorあるいは新生物neoplasmという。腫瘍のうち,浸潤や転移を起こさず,成長にも限界があるものを良性腫瘍,そうでないものを悪性腫瘍という。悪性腫瘍はすなわち癌である。…

【腫瘍】より

…異常な細胞が過剰に増生してできる組織の塊をいう。このうち浸潤や転移を起こさず,成長に限界のあるものを良性腫瘍,そうでないものを悪性腫瘍といい,後者が癌である。腫瘍の種類,発生機構,性状など,詳細については〈〉の項を参照されたい。…

※「悪性腫瘍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android