悪性の特徴をもつ腫瘍の総称。腫瘍(新生物neoplasm)とは、体の中に生じた異常な細胞が本来の制御を逸脱して、自律的に増殖し続けることによって生じる腫瘤(しゅりゅう)、病変をさす。腫瘍は良性のものと悪性のものとに大別され、悪性腫瘍は一般に「がん」と同義語として用いられる。両者を比較すると、悪性腫瘍には次のような特徴が認められる。
(1)悪性腫瘍は良性腫瘍に比して、正常な細胞、組織との形態の変化の度合い(異型性)が強い。
(2)悪性腫瘍は良性腫瘍に比して発育の速度が早く、良性腫瘍はほとんど再発しないのに対して、悪性腫瘍はしばしば再発する。
(3)良性腫瘍は周囲の組織を押しのけて増殖する「膨張性(拡張性)発育」の形をとるのに対して、悪性腫瘍は組織や細胞の間に浸潤して広がる「浸潤性発育」の形をとることが多い。
(4)良性腫瘍では、原発部位から離れた場所に運ばれて新たに発育する「転移(遠隔転移)」が起こらないのに対し、悪性腫瘍ではしばしば転移が起こる。
(5)良性腫瘍は全身への影響がしばしば軽度であるのに対し、悪性腫瘍は、発生した臓器ばかりでなく全身に重篤な影響を及ぼし、やがては生命を脅かす。
悪性腫瘍はさらに、皮膚や粘膜、分泌腺(せん)など上皮性細胞の性格をもつ「癌(がん)(がん腫)carcinoma」と、血管や筋肉、脂肪、骨、軟骨、神経、結合組織などの非上皮性細胞に由来する「肉腫sarcoma」に分けられる。造血細胞に由来する白血病やリンパ腫も広義には肉腫に含まれる。まれに上皮、非上皮双方の腫瘍細胞成分からなる混合性腫瘍もみられる。「がん」という呼称は、狭義にはがん腫のみをさすこともあるが、病理学的にはがん腫、肉腫を包括した悪性腫瘍を意味し、これらの総称として用いられることが多い。
[渡邊清高 2018年1月19日]
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…1962年,副腎皮質機能亢進症状を伴った肺癌の患者の腫瘍組織中に,本来は脳下垂体から分泌されるはずの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌が証明されたことから,異所性ホルモン産生腫瘍の概念が確立された。 肺癌の場合が圧倒的に多いが,カルシノイド症候群,甲状腺癌,膵癌,肝臓癌など種々の悪性腫瘍にみられる。作られるホルモンは,ACTHのほか,バソプレシン,カルシトニン,ヒト絨毛(じゆうもう)性ゴナドトロピン(hCG)など多様であり,複数のホルモンを同時に産生している腫瘍もある。…
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【癌の種類】
異常な細胞が過剰に増生してつくる組織の塊を,腫瘍tumorあるいは新生物neoplasmという。腫瘍のうち,浸潤や転移を起こさず,成長にも限界があるものを良性腫瘍,そうでないものを悪性腫瘍という。悪性腫瘍はすなわち癌である。…
…異常な細胞が過剰に増生してできる組織の塊をいう。このうち浸潤や転移を起こさず,成長に限界のあるものを良性腫瘍,そうでないものを悪性腫瘍といい,後者が癌である。腫瘍の種類,発生機構,性状など,詳細については〈癌〉の項を参照されたい。…
※「悪性腫瘍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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