改訂新版 世界大百科事典 「肺繊維症」の意味・わかりやすい解説
肺繊(線)維症 (はいせんいしょう)
pulmonary fibrosis
肺胞隔壁に広範(瀰漫(びまん)性)に繊維増殖をきたし,空咳,労作時息ぎれを主症状とする疾患。聴診では捻髪性ラッセル音,小水泡性ラッセル音がきかれ,胸部X線写真では瀰漫性の粒状-網状-はちの巣状陰影や肺の萎縮を呈し,肺機能検査では拘束性障害(肺活量の低下),拡散障害(肺胞から肺毛細血管への酸素の移行障害),低酸素血症を呈する。
肺繊維症という呼称は,狭義には肺間質(肺胞隔壁)の炎症(すなわち間質性肺炎)の終末像を意味するが,実際には一部,初期病変である間質性肺炎の臨床像をあわせもっていることが多いため,広義には間質性肺炎+狭義の肺繊維症として解釈されている。
肺繊維症の原因は種々雑多で,原因不明なもの(特発性),原因の明らかなもの(塵肺(じんぱい),感染症,過敏性肺臓炎,薬剤,放射線などによる),全身性疾患によるもの(膠原(こうげん)病,サルコイドーシスなど)に分類される。しかし,日常肺繊維症として最も多くみられるのは特発性で,これには急性型と慢性型があるが,前者はハーマン=リッチ症候群と呼ばれ,予後はきわめて悪い。
執筆者:伊藤 新作
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報