日本大百科全書(ニッポニカ) 「祝い殿」の意味・わかりやすい解説
祝い殿
いわいでん
同族(本家分家仲間)だけで「いわう(斎(いつ)き祭る)」神、「うえーでん」と多く呼び習わし、長野県中部、山梨県西部一帯に広くみられる。屋敷神や村鎮守とは別に同族仲間ごと別々に小さい祠(ほこら)を設け、年1回(春は2月、4月、秋は10月、11月)仲間だけで祀(まつ)るが、祭神は春日(かすが)、八幡(はちまん)、山神、水神など雑多であり、祭日も仲間ごとに異なっている。しかしいまは本家司祭の形はまれで、多く「頭屋(当番)制」で祭りを行い、「直会(なおらい)」の宴がむしろ主眼となってもいる。現在、同族仲間の協力関係はかなり薄れているが、祝い殿の祭りへの参加は同系の家仲間(家筋)である明証でもあるため、その祭りは仲間親睦(しんぼく)の機会として年々続いている。ともかく「同族氏神」としての独自の存在である。
[竹内利美]