日本大百科全書(ニッポニカ) 「神聖連合」の意味・わかりやすい解説
神聖連合
しんせいれんごう
Union sacrée フランス語
第一次世界大戦初期にフランスで成立した挙国一致体制。この名称は、独仏開戦(1914.8.4)の翌日の議会で読まれた大統領ポアンカレの、超党派的な全国民の団結による祖国擁護を訴える教書に初めて公的に用いられた。それは単なる精神運動ではなく、国内のすべての抗争の休止を実際にもたらした強固な臨戦体制であって、戦前に反戦・階級闘争を鼓吹した社会党や労働総同盟(CGT)も、例外的な少数者を除き、右翼勢力とも提携してそれに参加し、幹部は戦時国家の要職につきさえした。しかし、戦争が長引いて国民の戦意が衰えると、この体制は揺らぎ、1917年、労働者のストライキ運動と並んで反戦・平和運動が広まり、同年9月に社会党は開戦以来初めて入閣を拒否した。また議会内の政府批判の声も高まって「ユニオン・サクレ(神聖連合)」は崩れ、やがて同年末の好戦的なクレマンソーの独裁の成立とともに社会党、急進党はまったく体制から排除された。
[西海太郎]