稲毛氏(読み)いなげうじ

改訂新版 世界大百科事典 「稲毛氏」の意味・わかりやすい解説

稲毛氏 (いなげうじ)

武蔵国橘樹郡稲毛荘本領とする中世の武家。桓武平氏秩父氏族。小山田有重の三男重成が稲毛荘を領して稲毛三郎と称したのに始まる。重成は挙兵当初から源頼朝に従い,武功をあげて有力御家人となったが,他面たいへんな愛妻家であり,妻の病没に際しては別離の愁いに耐えかねて出家し,追善のためにと莫大な費用を投じて相模川に橋を架けている。しかし妻が北条時政の娘であったために時政とその後妻牧の方の策謀にまきこまれ,1205年(元久2)同族の畠山氏討滅の片棒を担がされたうえ,策謀の中心人物との汚名をきせられて子息小沢重政ともども誅殺されてしまう。しかも,わずかに残った子孫も47年(宝治1)の宝治合戦で三浦方にくみして討死し,一族は没落した。なお重成の娘は他家に嫁して健在であり,重成には孫娘になる綾小路師季の娘が重成誅殺後まもなく北条政子の猶子となり,重成の遺領武蔵国小沢郷を与えられている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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