本領(読み)ホンリョウ

デジタル大辞泉 「本領」の意味・読み・例文・類語

ほん‐りょう〔‐リヤウ〕【本領】

その人の備えているすぐれた才能特質。「本領を発揮する」
中世、開発以来代々領有している私領
[類語]売り強み長所特長見どころ取り柄美点身上魅力持ち味特色特質特性売り物真価真骨頂真面目本調子セールスポイントチャームポイントストロングポイントメリット

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精選版 日本国語大辞典 「本領」の意味・読み・例文・類語

ほん‐りょう‥リャウ【本領】

  1. 〘 名詞 〙
  2. もとからの領地。特に中世、開発以来代々相伝している私領。本知。
    1. [初出の実例]「信頼の死骸に向ひ尾籠のことしける奴ならば、本領(ホンリャウ)とらせて何かせん」(出典:平治物語(1220頃か)中)
  3. 特に中世、幕府や有力大名によって根本私領として公式に領有権を認められた土地。鎌倉時代には将軍から新給された御恩地と区別された。
    1. [初出の実例]「東国御家人安堵本領之時」(出典:吾妻鏡‐養和元年(1181)四月二〇日)
  4. ( ━する ) 領地として賜わること。
    1. [初出の実例]「日向の国をほんりゃうし悦び悦び退出す」(出典:浄瑠璃・出世景清(1685)五)
  5. その国の主な国土。中心となる国土。
    1. [初出の実例]「英国の本領に攻入りたれども」(出典:西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉初)
  6. 本来の特質。得意とするところ。特性。
    1. [初出の実例]「是謂儒者本領、是謂学問実際」(出典:童子問(1707)中)
    2. [その他の文献]〔元曲‐賺蒯通・第一折〕

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改訂新版 世界大百科事典 「本領」の意味・わかりやすい解説

本領 (ほんりょう)

中世在地領主の所領のうち開発相伝の根本私領をいう。鎌倉幕府法の解説書《沙汰未練書》は本領を定義して,〈本領とは開発領主として代々武家御下文(くだしぶみ)を賜る所領田畠(しよりようでんぱく)等の事なり。また私領とも云う〉と述べている。幕府法における本領とは,御家人が先祖以来伝領してきた固有の所領をいい,将軍家への奉公によって恩給された〈御恩地〉とは区別された。この本領は平安時代このかた,在地領主がみずから〈私功〉を加えて開発した所領田畠を起源とし,譲状(ゆずりじよう),手継文書(てつぎもんじよ)によって代々相伝され,勧農,収納など所務沙汰(しよむさた)を行い,他の妨げなく知行を全うしてきた〈一所懸命〉の地であって,同じく《沙汰未練書》が,〈御家人とは往昔以来,開発領主として武家御下文を賜る人の事なり〉といっているように,武士鎌倉殿本領安堵をうけて御家人となった。本領の構造は,領主屋敷(本宅),敷地,門田畠(もんでんぱく)((つくだ))を中心とし,開発に由来する名田畠(みようでんばく)(別名(べちみよう)),郷・保・村の所領所職(しよしき),社寺の諸職等から成り,そこに配置された一族,家人(けにん),所従(しよじゆう),下人(げにん),在家(ざいけ)などの人的結合を通じて,領主の〈家〉の支配が直接に及んでいた。本領は分割相続の対象にはされず,嫡男惣領に公験文書(くげんもんじよ)を添えて累代相伝されるのが中世武家社会の習いであった。
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普及版 字通 「本領」の読み・字形・画数・意味

【本領】ほんりよう(りやう)

性来のもの。特質。〔楽府雑録、琵琶〕段(善本)奏して曰く、且(しばら)く(康)崑崙(こんろん)にひて、一を彈ぜしめんと。彈ずるにんで、師(段善本)曰く、本領何ぞ雜なる。ねて聲を帶びたりと。崑崙きて曰く、段師は人なりと。

字通「本」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「本領」の意味・わかりやすい解説

本領
ほんりょう

中世の在地領主の所領のなかで開発相伝(かいほつそうでん)の私領をいう。根本私領(こんぽんしりょう)ともよばれた。平安後期の在地領主の典型である開発領主は、本宅を中核に私財を投じて私領の開発を進めた。開発とは領主が周辺の百姓に種子や農料を与えて請作(うけさく)(請負耕作)を進めることであり、開発私領は世襲され、在地領主の「一所懸命(いっしょけんめい)の地」として経営された。鎌倉時代末の「沙汰未練書(さたみれんしょ)」には、「本領とは開発領主として代々武家御下文(おんくだしぶみ)を賜る所領田畠等の事なり、また私領とも云う」と定義されている。在地領主の所領のうち、鎌倉殿(源頼朝)の安堵状(あんどじょう)を得つつ相伝された固有の所領が本領であり、本領の安堵を受けた武士が御家人(ごけにん)であった。

[鈴木哲雄]

『安田元久著『地頭及び地頭領主制の研究』(1961・山川出版社)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「本領」の解説

本領
ほんりょう

中世の在地領主の根本私領のこと。先祖の開発地であり,その後累代相伝してきたという由緒から,その私有権利が裏付けられていた。御家人の場合には将軍から本領安堵をうけたが,幕府法でも軍功によって与えられた御恩地とは区別され,百姓に対する課役賦課などで大きな自由裁量権をもっていた。

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世界大百科事典(旧版)内の本領の言及

【本宅】より

…領主的な開発を行うのに必要な基本財産は,ふつう1町余の屋敷畠(やしきはく),在家(ざいけ),苧桑,所従,牛馬などで,これらを基礎として現地の〈居屋敷(いやしき)〉(本宅)や〈一門輩居薗〉を設けて堀垣をかため,国衙に申請して適地の荒野を占定し,私財を投じて百姓を語らい浪人を招き寄せて開発にあたった。こうして形成された在地領主の本領は,在京の私領主の所領とは異なり,その在地性にもとづく強固な支配構造をそなえていたが,その根源は本宅に集中された〈いえ〉の人的集団と家産,本宅敷地としての土地支配形態にあった。中世武士団もこの本宅を核として形成され存続した。…

※「本領」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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