筋ホスホリラーゼ欠損症

内科学 第10版 「筋ホスホリラーゼ欠損症」の解説

筋ホスホリラーゼ欠損症(McArdle病、グリコーゲン病V型)(グリコーゲン病(糖原病))

(3)筋ホスホリラーゼ欠損症(McArdle病,グリコーゲン病Ⅴ型)
 ホスホリラーゼには異なる遺伝子に支配される筋型,脳型,肝型のアイソザイムが存在する.本症の遺伝子変異には人種差があり,わが国では708〜709番目コドンが変異する例が多い.主要な臨床症状は小児・学童期に始まる筋運動持続能の低下である.運動時早期に,疲労,筋こわばり,脱力が出現するが,運動を続けるうちに症状が軽くなることがある(セカンドウインド現象).激しい運動は筋壊死,ミオグロビン尿さらに急性腎不全をきたすことがある.若年者では筋萎縮,筋力低下はみられないことが多い.
診断
 血清CKの上昇は運動後に特に著明である.前腕阻血運動負荷試験で有痛性筋拘縮を起こす.筋電図では活動電位が記録されない(electrical silence)拘縮である.阻血運動負荷試験で乳酸の上昇を認めない.筋病理ではおもに筋形質膜下にグリコーゲン蓄積を伴う空胞変性像を呈する.ホスホリラーゼに対する組織化学的染色で酵素欠損が証明できる. 
治療
 根治的な治療法はない.過激な運動は避けゆっくりとした持続運動を主体としたトレーニングを実施する.ビタミンB6補充療法が行われることもある.[樋口逸郎]
■文献
Dimauro S, Hays AP, et al: Nonlysosomal glycogenoses. In: Myology, 3rd ed, pp1535-1558, McGraw-Hill, New York, 2004.糖原病Ⅱ型(ポンペ病)ガイドライン編集委員会(代表 衞藤義勝):糖原病Ⅱ型(ポンペ病)診断治療ガイドライン,イーエヌメディックス,東京,2007.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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