アイソザイム(英語表記)isozyme

翻訳|isozyme

デジタル大辞泉 「アイソザイム」の意味・読み・例文・類語

アイソザイム(isozyme)

同一の生物種にあって同一の反応を触媒するが、化学構造が異なる酵素同位酵素イソ酵素イソチーム

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改訂新版 世界大百科事典 「アイソザイム」の意味・わかりやすい解説

アイソザイム
isozyme

生化学的には同一の反応を触媒するが,タンパク質分子としては異なる酵素のことで,イソ酵素とも呼ぶ。同一種生物の異なる臓器などで見いだされ,さまざまなものが知られている。乳酸デヒドロゲナーゼはその代表例である。この酵素はタンパク質サブユニット(構成単位)が4個集合した四量体であるが,サブユニットは同一ではなく,M(筋肉型),H(心臓型)の2型がある。それゆえ生体内では5種の四量体(M4,M3H,M2H2,MH3,H4)が存在する。嫌気的な骨格筋にはM4型が多量に存在し,好気的な心筋,肝臓ではH4型が多い。M4型はH4型よりピルビン酸に対する親和性が高く,骨格筋中のM4型酵素はピルビン酸を乳酸に迅速に変える。アイソザイムは,非常によく似ているが,異なった遺伝子によって支配されていて,これらの遺伝子はもともと一つであったものが進化の過程で遺伝子重複gene duplicationにより複数化した後徐々に変化したものであろうと考えられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイソザイム」の意味・わかりやすい解説

アイソザイム
あいそざいむ
isozyme

構造は異なっていても、同じ反応を触媒する酵素。一つの生物のなかで同じ生体反応を触媒しているのに、器官細胞によって酵素の性質が少しずつ違うことがある。これは、それぞれの器官などの置かれている環境や役割にもっともふさわしい酵素が働くように、似てはいるが少しずつ性質の違う酵素を生物がつくるからである。このような関係にある酵素をアイソザイム(イソ酵素)とよぶ。アイソとは「同じ」という意味である。なお、病気の診断にアイソザイムの分析が利用されることもある。たとえば、血液中のGOTグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)値が高くなった場合、アイソザイム型を調べると、肝臓の疾患によるものか、心臓の疾患によるものかを判定できる。

[笠井献一]

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化学辞典 第2版 「アイソザイム」の解説

アイソザイム
アイソザイム
isozyme

イソ酵素ともいう.広義には,同じ反応を触媒する酵素群をさす.一方,狭義には,同じ動物種において同一の反応を触媒するが,構造またはサブユニットの組合せが異なる酵素をいう.電気的性質を異にするため,電気泳動させると異なる移動度を示す.たとえば,ラットの組織より単離される乳酸脱水素酵素は,分子量3.35×104 のサブユニット4個より構成される分子量1.34×105 のタンパク質であるが,電気泳動法によって5種類のアイソザイムの存在が確認されている.同酵素のサブユニットはMおよびH鎖であり,その組合せによって M4,M3H,M2H2,H4 が存在し,それぞれのアイソザイムは基質に対する親和力を異にする.生体内におけるアイソザイムの存在は,代謝の調節に役立っていると考えられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アイソザイム」の意味・わかりやすい解説

アイソザイム
isozyme

イソチーム,アイソエンザイム isoenzyme,イソ酵素ともいう。同位酵素のこと。従来は均一の成分と考えられていた酵素は,蛋白分画技術の進歩によって,いくつかの成分に分離されることがわかってきた。そこで,酵素としての働きは同じでも,電気泳動法などの分離方法によって分類すると,分子構造や物理・化学的性質などの異なる一群の酵素をアイソザイムと名づけた。たとえば血清中の乳酸脱水素酵素 (LDH) は5種類のアイソザイムに分けられ,病気によって組織細胞に含まれるアイソザイムの種類が異なるため,どのアイソザイムが高値になっているかを調べれば,異常のある臓器が推定できる。

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百科事典マイペディア 「アイソザイム」の意味・わかりやすい解説

アイソザイム

同一種内で,同じ作用をもっているがタンパク質としての構造や組成の異なる酵素をいう。一般にアイソザイムはそれを生成する組織によって異なり,多くの場合,タンパク質の一次構造(アミノ酸配列)がわずかに異なっている。また,酵素タンパク質を構成するユニットの組合せが異なっている場合もある。ニワトリの乳酸脱水素酵素の場合は5種類のアイソザイムをもつが,これは,2種の異なったポリペプチド・サブユニット(HとM)が四つ集まってできた酵素で,5通りの組合せがあるためである。

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栄養・生化学辞典 「アイソザイム」の解説

アイソザイム

 イソ酵素ともいう.同じ個体の中にあり,同じ反応を触媒する酵素同士.動物の乳酸脱水素酵素,ピルビン酸キナーゼなどの例がよく知られている.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアイソザイムの言及

【アミラーゼ】より

… ヒトの血液,尿では一定レベルのアミラーゼ活性があるが,耳下腺炎,膵炎のときには活性値が上昇し,診断の大きな目安になる。唾液腺アミラーゼと膵アミラーゼとはアイソザイムであるので,別々に測定することも可能である。【柳田 充弘】【竹内 正】。…

【酵素】より

…代謝のフィードバック制御がその代表的な例であるが,これについては後で述べる。同じ反応を触媒するにもかかわらず,同一細胞内に2種以上の分子として存在する,いわゆるイソ酵素(アイソザイム)の例も少なからず知られている。乳酸脱水素酵素のように,2種(H型とM型)のサブユニットの組合せで四量体酵素をつくると,合計5種類のアイソザイムがつくられる(図7)が,それらの分布は器官ごとに遺伝的に決められており,各器官においてそれぞれ独特の代謝調節に寄与しているといわれている。…

【乳酸デヒドロゲナーゼ】より

…分子量は約14万で,補酵素としてNADH(酸化反応の場合はNAD)を必要とする。四つのサブユニットからなり,アイソザイムの代表例として知られている。すなわち,この酵素のサブユニットのポリペプチド鎖にはM(筋肉)型とH(心臓)型の2種があるため,酵素全体ではM4,M3H,M2H2,MH3,H4の5種のアイソザイムが存在する。…

※「アイソザイム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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