糖原病(読み)トウゲンビョウ(その他表記)glycogen storage disease

精選版 日本国語大辞典 「糖原病」の意味・読み・例文・類語

とうげん‐びょうタウゲンビャウ【糖原病】

  1. 〘 名詞 〙 体内にグリコーゲンが異常蓄積する病気。主に骨格筋または肝臓がおかされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「糖原病」の意味・わかりやすい解説

糖原病
とうげんびょう
glycogen storage disease
glycogenosis

先天性代謝異常のうち、糖質に関する代謝異常で、酵素の欠損によって過剰なグリコーゲンが肝臓などの臓器や組織の中に蓄積する常染色体潜性の疾患群を総称して糖原病という。したがって、欠損酵素の種類によって病型が異なり、Ⅰ型からⅦ型まで分類できる。

[山口規容子]

Ⅰ型糖原病

フォンギールケvon Gierke病ともよばれ、グルコース-6-フォスファターゼの活性低下により、グリコーゲンが肝臓、腎(じん)臓、腸、血球などに蓄積する。症状は、肝腫大(しゅだい)、低身長、低血糖発作、出血傾向が特徴で、早期治療が必要である。

[山口規容子]

Ⅱ型糖原病

ポンペPompe病ともよばれ、心筋にグリコーゲンが蓄積する。生後まもなく呼吸困難、チアノーゼ、筋力低下が出現し、心不全のため生後1~2年で死亡する。

[山口規容子]

Ⅲ型糖原病

グリコーゲン分解が完全に行われないため、肝臓、筋、血球にグリコーゲンが蓄積し、症状はⅠ型糖原病に似るが、概して軽度で、予後は悪くない。

[山口規容子]

Ⅳ型糖原病

これも肝臓にグリコーゲンが蓄積する型で、乳児期より肝脾腫(かんひしゅ)が著明になり、5歳ころまでに肝硬変になり死亡する。

[山口規容子]

Ⅴ型糖原病

筋肉中にグリコーゲンが蓄積するため、筋力が低下して運動を続けることができなくなる。

[山口規容子]

Ⅵ型・Ⅶ型糖原病

いずれも肝臓、筋にグリコーゲンが蓄積し、それぞれⅠ型・Ⅴ型と臨床症状が似ているが、軽度であり、生命の予後は良好である。

 なお、肝フォスフォリラーゼキナーゼの欠損によって肝腫や低血糖などをおこす伴性潜性遺伝する型をⅧ型糖原病とすることもある。

 糖原病の診断は、グリコーゲンが蓄積する肝臓、筋、白血球の生検材料から、蓄積しているグリコーゲンを確認し、酵素の活性低下あるいは欠損を証明することによって確定する。なお、糖原病の根本的治療法はない。

[山口規容子]

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内科学 第10版 「糖原病」の解説

糖原病(グリコーゲン病)(糖代謝異常)

定義・概念
 糖原病(グリコーゲン病)は,glycogen storage disease(グリコーゲン蓄積病)ともよばれる.グリコーゲン(糖原)代謝に関与する酵素の遺伝的欠損により,肝臓や筋などにグリコーゲンが病的に蓄積してその臓器障害を引き起こすとともに,病型により低血糖を呈する疾患である.【⇨15-21-10)】
分類
 糖原病には責任遺伝子を異にする多くの病型が存在する(図13-2-36).主要な罹患臓器が肝であるⅠ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅵ,Ⅷ型を肝型糖原病,筋症状が特徴的なV,Ⅶ型を筋型糖原病,Ⅱ型を混合型と分類することができるが,必ずしも絶対的な分類ではない.
疫学
 累積発生頻度は,およそ数万人に1人と推定される.Ⅲ型が最も多く,ついでⅠ型およびⅡ型が多いと考えられている.
病理
 罹患臓器にグリコーゲンの蓄積が認められる.グリコーゲンはPAS陽性でジアスターゼによって消化される.ただし,Ⅳ型では異常構造のグリコーゲンが蓄積するため,PAS陽性ではあるがジアスターゼで消化されない.Ⅱ型ではライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し,末梢血リンパ球内の空胞として認められる.
遺伝形式
 Ⅷ型のある一群(X染色体性)を例外として,そのほかの糖原病はすべて常染色体劣性遺伝形式をとる.[松原洋一]
■文献
Kishnani PS, Koeberl D, et al: Glycogen storage diseases. In: The Online Metabolic and molecular Bases of Inherited Disease, (Valle D, Beaudet AL, et al eds). http://www.ommbid.com/OMMBID/the_online_metabolic_and_molecular_bases_of_inherited_disease/b/abstract/part7/ch71

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家庭医学館 「糖原病」の解説

とうげんびょうぐりこーげんびょう【糖原病(グリコーゲン病) Glycogenosis】

[どんな病気か]
 嫌気性解糖系(けんきせいかいとうけい)(コラム「筋肉エネルギー代謝のしくみ」)を担っている酵素(こうそ)が、不足するか欠損するために、分解されるべきグリコーゲン(糖原)が蓄積されて、筋肉がおかされる病気です。
 現在、欠損酵素によりⅠ~Ⅷ型に分類された10の病型が見つかっています。一般に常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)します。
 Ⅰ型(フォン・ギールケ病)のように、直接には筋肉をおかさない病型もあります。しかし、2つしかないATP(アデノシン三リン酸)産生系の一方が障害されれば、ATPを大量に消費する筋肉に障害がおこらないはずはありません。
 Ⅱ型(ポンペ病)は、筋ジストロフィーとの区別が問題となります。筋肉だけではなく、肝臓や心筋にも障害をともなう重症の疾患です。成人では呼吸不全となることが多いものです。
 Ⅲ・Ⅳ型はまれな疾患で、心筋障害をともないます。
 Ⅴ型(マッカードル病)は、ホスホリラーゼが欠損します。若年から発症し、運動時に筋肉の痛みをともなうけいれんやミオグロビン尿(にょう)(急激に筋肉が壊れて、尿がビール瓶(びん)のような色になる)がみられます。
 Ⅵ型は直接に筋肉は障害されません。
 Ⅶ型(垂井病(たるいびょう))は、筋肉のホスホフルクトキナーゼが欠損します。発作性ミオグロビン尿がみられます。
[治療]
 阻血下運動負荷試験(そけつかうんどうふかしけん)(酸素がない状態で運動を行ない、乳酸(にゅうさん)が生成できるかをみる)を行ないます。糖原病であれば、乳酸の生成がみられません。筋や白血球(はっけっきゅう)などで生化学的に欠損酵素を判定します。
 治療は食事療法程度で、根本的な治療法はありません。

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改訂新版 世界大百科事典 「糖原病」の意味・わかりやすい解説

糖原病 (とうげんびょう)
glycogenosis

肝臓,筋肉の貯蔵グリコーゲンの分解機能が低下し,異常蓄積する遺伝病。低血糖発作,肝腫大を示す肝型と,筋力低下を示す筋型,心不全を示す全身型に大別される。
先天性代謝異常
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「糖原病」の意味・わかりやすい解説

糖原病
とうげんびょう
glycogen storage disease

フォン・ギールケ病,糖原蓄積症ともいう。先天的な代謝異常で,体組織にグリコーゲンが異常に蓄積する疾患をいう。肝腫,低血糖,負荷後の血糖曲線の遅延,アドレナリン過血糖の欠如,尿中ケトン体排泄の増加などがみられる。比較的まれな病気で,1929年ドイツの病理学者 E.ギールケが記載した。本症自体よりは合併症で死亡する場合が多く,根本的な治療法はない。

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栄養・生化学辞典 「糖原病」の解説

糖原病

 生体組織にグリコーゲンが異常に蓄積する症状.グリコーゲン代謝に関連する酵素の欠損による.

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世界大百科事典(旧版)内の糖原病の言及

【肝腫大】より

…とくに心臓弁膜症では右心不全を合併するときは,肝腫大が著しく圧痛がみられる。種々の代謝性肝臓疾患,たとえば,鉄蓄積によるヘモクロマトージス,アミロイド蓄積によるアミロイドーシス,グリコーゲンによる糖原病などでも肝腫大がみられる。そのほか,伝染性単核症,日本住血吸虫症などで肝脾腫が現れる。…

【先天性代謝異常】より


[先天性代謝異常の分類]
 生体内の物質代謝経路に従って以下のように分類する。(1)糖質代謝異常 糖原病ガラクトース血症など生体のエネルギー源であるブドウ糖の供給障害が中心である。(2)アミノ酸代謝異常 タンパク質が分解吸収され,再合成して利用される過程の障害で,フェニルケトン尿症楓糖尿症ホモシスチン尿症などがある。…

※「糖原病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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