デジタル大辞泉
「糖原病」の意味・読み・例文・類語
とうげん‐びょう〔タウゲンビヤウ〕【糖原病】
グリコーゲンが体内に異常蓄積する病気。グリコーゲンを分解する酵素が先天的に欠如しているために起こり、主に骨格筋または肝臓がおかされる。
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とうげん‐びょうタウゲンビャウ【糖原病】
- 〘 名詞 〙 体内にグリコーゲンが異常蓄積する病気。主に骨格筋または肝臓がおかされる。
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糖原病
とうげんびょう
Glycogenosis
(子どもの病気)
糖原(グリコーゲン)は、脂肪と同様に体のなかの貯蔵エネルギーのひとつであり、とくに肝臓と筋に多く蓄えられています。肝臓の糖原は、空腹時にブドウ糖にまで分解されて血液中に放出され、全身で利用されます。筋の糖原は、短時間に大きなエネルギーを要する運動時に分解され、筋で用いられます。
糖原病は、糖原の利用が障害され、結果として組織に糖原が異常に蓄積する病気です。10種前後の病型があり、蓄積する組織にしたがって肝臓(肝型)、筋(筋型)、肝臓と筋(肝筋型)、心筋(心筋型)に分類されます。
糖原の分解に関係する各種酵素の遺伝子異常が原因で、大部分は常染色体劣性遺伝し、一部はX連鎖劣性遺伝します。
肝型では、低血糖、肝臓の腫大(はれて大きくなる)、低身長などが主な症状です。肝臓の糖原から生成されたブドウ糖は血液中に放出され、各組織で(とくに脳など)で利用されます。低血糖になると脳のはたらきが障害され、頭がぼーっとする程度の軽いものから昏睡となる重い意識障害まで、血糖の低さにしたがってさまざまな症状が認められます。肝臓に糖原が脂肪とともに蓄積され、肝臓が腫大し、子どもではおなかが大きくふくらんで見えることもあります。
成人後には良性の肝腺腫ができて、悪性化することもあるので、注意が必要です。また、人形様顔貌、低身長、高乳酸血症、高脂血症、高尿酸血症、肝硬変などが認められることもあります。
筋型では、激しい運動時の疲労、筋力の低下、筋肉痛、筋の崩壊によるミオグロビン尿(褐色尿)などが認められます。
肝筋型では両者の症状が認められ、心筋型では心臓が拡大し、心不全の症状を示します。
症状、肝・筋のMRIやCT、フェルナンデスらにより確立された負荷試験、肝・筋生検による糖原の蓄積の確認、血液、肝、筋組織を用いた酵素活性の測定などにより診断されます。最近では、遺伝子解析により簡単に診断される病型も知られています。
肝型では、特殊ミルクや食事を頻回に分けて与え、血糖の維持を図ることが目標になります。夜間の低血糖が問題になる場合には、経管栄養を施したり、就寝前や夜間にコーンスターチを与えます。病型によっては、乳糖、ガラクトース、果糖などを制限します。筋型では、激しい運動を避け、高蛋白食が有効なこともあります。なお、肝型では肝移植、重症心筋型では心移植が有効な治療法です。
先天性代謝異常症を専門とする医師の診察を受ける必要があります。
早坂 清
糖原病
とうげんびょう
Glycogen strage disease
(遺伝的要因による疾患)
消化管から吸収された糖質は、糖原(グリコーゲン)として肝臓を中心に体内に蓄えられます。このグリコーゲン代謝に関係する酵素異常により、主に肝臓に糖原が蓄積する肝型と、筋症状が特徴的な心・筋型が知られています。
肝型糖原病では、肝内に蓄えられたグリコーゲンが利用できないために、肝腫大と低血糖が現れ、次第に低身長が顕著になります。病型により鼻出血が止まりにくい、感染しやすいなどの症状が現れ、痛風、尿路結石、腎不全、肝腺腫を来すこともあります。
心・筋型では、筋力低下や心不全を来します。
肝型は、頻回に食事をしたり、体内でゆっくりと消化吸収されるコーンスターチ(βでんぷん)や糖原病用ミルクを使用した食事療法と、各症状に即した治療を行います。
心・筋型では、対症療法に加え、欠損酵素の補充療法が行われる場合もあります。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
糖原病
とうげんびょう
glycogen storage disease
glycogenosis
先天性代謝異常のうち、糖質に関する代謝異常で、酵素の欠損によって過剰なグリコーゲンが肝臓などの臓器や組織の中に蓄積する常染色体潜性の疾患群を総称して糖原病という。したがって、欠損酵素の種類によって病型が異なり、Ⅰ型からⅦ型まで分類できる。
[山口規容子]
フォン・ギールケvon Gierke病ともよばれ、グルコース-6-フォスファターゼの活性低下により、グリコーゲンが肝臓、腎(じん)臓、腸、血球などに蓄積する。症状は、肝腫大(しゅだい)、低身長、低血糖発作、出血傾向が特徴で、早期治療が必要である。
[山口規容子]
ポンペPompe病ともよばれ、心筋にグリコーゲンが蓄積する。生後まもなく呼吸困難、チアノーゼ、筋力低下が出現し、心不全のため生後1~2年で死亡する。
[山口規容子]
グリコーゲン分解が完全に行われないため、肝臓、筋、血球にグリコーゲンが蓄積し、症状はⅠ型糖原病に似るが、概して軽度で、予後は悪くない。
[山口規容子]
これも肝臓にグリコーゲンが蓄積する型で、乳児期より肝脾腫(かんひしゅ)が著明になり、5歳ころまでに肝硬変になり死亡する。
[山口規容子]
筋肉中にグリコーゲンが蓄積するため、筋力が低下して運動を続けることができなくなる。
[山口規容子]
いずれも肝臓、筋にグリコーゲンが蓄積し、それぞれⅠ型・Ⅴ型と臨床症状が似ているが、軽度であり、生命の予後は良好である。
なお、肝フォスフォリラーゼキナーゼの欠損によって肝腫や低血糖などをおこす伴性潜性遺伝する型をⅧ型糖原病とすることもある。
糖原病の診断は、グリコーゲンが蓄積する肝臓、筋、白血球の生検材料から、蓄積しているグリコーゲンを確認し、酵素の活性低下あるいは欠損を証明することによって確定する。なお、糖原病の根本的治療法はない。
[山口規容子]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
糖原病(グリコーゲン病)(糖代謝異常)
定義・概念
糖原病(グリコーゲン病)は,glycogen storage disease(グリコーゲン蓄積病)ともよばれる.グリコーゲン(糖原)代謝に関与する酵素の遺伝的欠損により,肝臓や筋などにグリコーゲンが病的に蓄積してその臓器障害を引き起こすとともに,病型により低血糖を呈する疾患である.【⇨15-21-10)】
分類
糖原病には責任遺伝子を異にする多くの病型が存在する(図13-2-36).主要な罹患臓器が肝であるⅠ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅵ,Ⅷ型を肝型糖原病,筋症状が特徴的なV,Ⅶ型を筋型糖原病,Ⅱ型を混合型と分類することができるが,必ずしも絶対的な分類ではない.
疫学
累積発生頻度は,およそ数万人に1人と推定される.Ⅲ型が最も多く,ついでⅠ型およびⅡ型が多いと考えられている.
病理
罹患臓器にグリコーゲンの蓄積が認められる.グリコーゲンはPAS陽性でジアスターゼによって消化される.ただし,Ⅳ型では異常構造のグリコーゲンが蓄積するため,PAS陽性ではあるがジアスターゼで消化されない.Ⅱ型ではライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し,末梢血リンパ球内の空胞として認められる.
遺伝形式
Ⅷ型のある一群(X染色体性)を例外として,そのほかの糖原病はすべて常染色体劣性遺伝形式をとる.[松原洋一]
■文献
Kishnani PS, Koeberl D, et al: Glycogen storage diseases. In: The Online Metabolic and molecular Bases of Inherited Disease, (Valle D, Beaudet AL, et al eds). http://www.ommbid.com/OMMBID/the_online_metabolic_and_molecular_bases_of_inherited_disease/b/abstract/part7/ch71
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
とうげんびょうぐりこーげんびょう【糖原病(グリコーゲン病) Glycogenosis】
[どんな病気か]
嫌気性解糖系(けんきせいかいとうけい)(コラム「筋肉エネルギー代謝のしくみ」)を担っている酵素(こうそ)が、不足するか欠損するために、分解されるべきグリコーゲン(糖原)が蓄積されて、筋肉がおかされる病気です。
現在、欠損酵素によりⅠ~Ⅷ型に分類された10の病型が見つかっています。一般に常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)します。
Ⅰ型(フォン・ギールケ病)のように、直接には筋肉をおかさない病型もあります。しかし、2つしかないATP(アデノシン三リン酸)産生系の一方が障害されれば、ATPを大量に消費する筋肉に障害がおこらないはずはありません。
Ⅱ型(ポンペ病)は、筋ジストロフィーとの区別が問題となります。筋肉だけではなく、肝臓や心筋にも障害をともなう重症の疾患です。成人では呼吸不全となることが多いものです。
Ⅲ・Ⅳ型はまれな疾患で、心筋障害をともないます。
Ⅴ型(マッカードル病)は、ホスホリラーゼが欠損します。若年から発症し、運動時に筋肉の痛みをともなうけいれんやミオグロビン尿(にょう)(急激に筋肉が壊れて、尿がビール瓶(びん)のような色になる)がみられます。
Ⅵ型は直接に筋肉は障害されません。
Ⅶ型(垂井病(たるいびょう))は、筋肉のホスホフルクトキナーゼが欠損します。発作性ミオグロビン尿がみられます。
[治療]
阻血下運動負荷試験(そけつかうんどうふかしけん)(酸素がない状態で運動を行ない、乳酸(にゅうさん)が生成できるかをみる)を行ないます。糖原病であれば、乳酸の生成がみられません。筋や白血球(はっけっきゅう)などで生化学的に欠損酵素を判定します。
治療は食事療法程度で、根本的な治療法はありません。
出典 小学館家庭医学館について 情報
糖原病 (とうげんびょう)
glycogenosis
肝臓,筋肉の貯蔵グリコーゲンの分解機能が低下し,異常蓄積する遺伝病。低血糖発作,肝腫大を示す肝型と,筋力低下を示す筋型,心不全を示す全身型に大別される。
→先天性代謝異常
執筆者:中村 了正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
糖原病
とうげんびょう
glycogen storage disease
フォン・ギールケ病,糖原蓄積症ともいう。先天的な代謝異常で,体組織にグリコーゲンが異常に蓄積する疾患をいう。肝腫,低血糖,負荷後の血糖曲線の遅延,アドレナリン過血糖の欠如,尿中ケトン体排泄の増加などがみられる。比較的まれな病気で,1929年ドイツの病理学者 E.ギールケが記載した。本症自体よりは合併症で死亡する場合が多く,根本的な治療法はない。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
糖原病
生体組織にグリコーゲンが異常に蓄積する症状.グリコーゲン代謝に関連する酵素の欠損による.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の糖原病の言及
【肝腫大】より
…とくに[心臓弁膜症]では右心不全を合併するときは,肝腫大が著しく圧痛がみられる。種々の代謝性肝臓疾患,たとえば,鉄蓄積による[ヘモクロマトージス],アミロイド蓄積によるアミロイドーシス,グリコーゲンによる糖原病などでも肝腫大がみられる。そのほか,伝染性単核症,日本住血吸虫症などで肝脾腫が現れる。…
【先天性代謝異常】より
…
[先天性代謝異常の分類]
生体内の物質代謝経路に従って以下のように分類する。(1)糖質代謝異常 [糖原病],[ガラクトース血症]など生体のエネルギー源であるブドウ糖の供給障害が中心である。(2)アミノ酸代謝異常 タンパク質が分解吸収され,再合成して利用される過程の障害で,[フェニルケトン尿症],[楓糖尿症],[ホモシスチン尿症]などがある。…
※「糖原病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」