急性腎不全とは、何らかの原因により腎機能が急激(数時間から数週間)に低下し、その結果、高クレアチニン血症(血清クレアチニンの高値)、高
尿量の減少を伴う
原因は、障害された部位によって
①腎前性
腎臓自体に障害はなく、循環血流量が低下するために起こります。つまり尿を作る原料である血液の、腎臓への供給が不足して腎不全になった状態です。
出血や下痢などによる循環
②腎性
腎臓自体が障害されたために起こる急性腎不全です。腎臓自身の病気、薬物、その他の病気の代謝産物による閉塞や、その物質の腎毒性などが原因となります。
③腎後性
腎臓でつくられた尿を体外へ排泄するための経路(尿管、膀胱、尿道など)が閉塞したために発症する急性腎不全です。通常は、他臓器の腫瘍の
症状の現れ方は尿毒症(にょうどくしょう)の項目で詳細に解説しているので、参照してください。
急性腎不全の診断は、血液検査での血清クレアチニンの値でわかります。しかし、原因検索のためには、血液検査、尿検査、画像診断(超音波、X線、CT、MRI検査など)だけでなく、詳細な病歴(経過)がヒントとなることが少なくありません。
治療の基本は、原因となる病態を改善し、腎機能が回復するまで、腎不全により破綻した体内の内部環境を維持することです。薬物治療で臨床上、効果が証明されたものはありません。進行した急性腎不全には血液浄化療法が必要です。
腎臓自体の障害が原因の場合は、死亡率は10%以下といわれています。しかし、腎臓以外の臓器障害が原因の場合(とくに複数の臓器障害が同時に起こった場合には)、約50%が死亡します。
腎機能の不完全な回復が30%にみられ、そのうち腎機能が軽度低下していても安定した経過をたどる人は約25%、腎機能がいったん回復しても徐々に低下する人が約5%います。
病歴をはっきりさせることが最も大切です。つまり、これまでかかった病気、受けた検査や手術、薬物の服用歴とアレルギー(使ってはいけない薬)、健康食品や嗜好品などについて詳細に医師に伝えることが、原因の早期診断につながります。
福井 光峰, 富野 康日己
腎臓の
体内水分量は、若年者に比べて男女ともに約10%減少するので、脱水症状を起こしやすく、下痢、
高齢者の場合、同時にさまざまな病気をもっている率が高いため、薬剤の投与機会が多くなり、とくに抗生剤や鎮痛解熱薬、悪性腫瘍(がん)の治療薬、あるいは検査のための造影剤使用などが腎不全の原因になることもあります。
症状はこの病気に特有なものはなく、全身
急性腎不全は一般に、障害の部位により腎前性、腎性、
急性腎不全は可逆性(元にもどることが可能)ですが、高齢者は二次的に心不全や重症感染症を発症しやすいので、早期診断、早期治療が重要です。その際は、腎性か腎前性かによって治療方針が異なるため、このうちのどちらなのかの診断も必要です。
表12に腎性と腎前性の鑑別項目を示します。このなかでも、尿中ナトリウム濃度とナトリウム排泄率(FENa)の数値が、見分ける際の指標として有用です。
急性腎不全を発症した場合には、まず体液が減少して脱水状態にあるのか、むしろ体液過剰で
脱水が改善されたり、溢水の場合には、ループ利尿薬(フロセミド)を静脈注射(静注)します。利尿反応を確認しながら20~100㎎まで増量し、その間、尿量が2倍になれば継続します。ドーパミンの持続投与や心房性ナトリウム利尿ペプチドの投与も有効な場合があり、いずれも静脈投与します。これらは併用も可能です。
これらの治療法では効果がなく、溢水となった場合、
回復期は大量に尿が出るため、喪失分を考慮した水の補充や電解質輸液を行って、脱水状態にならないように注意します。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…腎臓の機能のうち,糸球体のろ(濾)過機能の低下によって,生体内のホメオスタシスが維持できなくなった状態をいう。腎不全は,急速に発症し,回復の可能性のある急性腎不全と,非可逆的に進行する慢性腎不全に分けられる。
[急性腎不全]
急激に発症し,数時間から数日の間に腎不全になるもので,90%以上は腎臓以外の誘因によって発生する。…
※「急性腎不全」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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