日本大百科全書(ニッポニカ) 「粘液細菌類」の意味・わかりやすい解説
粘液細菌類
ねんえきさいきんるい
[学] Myxobacteriomycota
原核菌類の一分類群。栄養体は微小な原核細胞であるが、細菌類とは別系統の菌類と考えられる。粘液細菌類は細胞壁のかわりに粘液層で包まれて、滑走運動を行うが、のちに休眠胞子になる。多くのものは、休眠胞子となる前に偽(ぎ)変形体と子実体を形成する。粘液細菌類の細胞は幅が1マイクロメートル以下、長さはその2倍以上で、分裂して増殖し、多数が密接して滑走する偽変形体は、基物の表面に逆渦巻状に広がる。基物のところどころでは細胞が凝集し、肉眼的大きさの黄色や赤色の子実体を形成する。粘液状子実体では、胞子がくっつき合って球、楕円(だえん)体、洋ナシ形などの塊になる。数百数千の胞子が共通の膜で覆われたものは包嚢(ほうのう)(シスト)といわれ、何年間も乾燥に耐える。包嚢には柄(え)のあるものや、柄が分岐しているものもある。柄は、固くなった粘液と細胞の混合物でできている。粘液細菌類の多くは腐植質や動物の糞(ふん)などに腐生し、セルロースの分解、あるいは細菌の体外消化を行う。
[寺川博典]