内科学 第10版 「糖原病V型」の解説
糖原病V型 (McArdle病)(糖原病(グリコーゲン病))
病因
PYGM遺伝子によってコードされる筋ホスホリラーゼの遺伝的欠損により筋症状を呈する.ホスホリラーゼには,筋型,肝型,脳型の3種類のアイソザイムが存在し,それぞれ別の遺伝子によりコードされている.本症では筋型が,次に述べる糖原病Ⅵ型では肝型が,それぞれ特異的に欠損している.
病態生理
筋ホスホリラーゼの欠損により,筋肉中のグリコーゲンをエネルギー源として利用できない.運動により筋の易疲労性,脱力,有痛性硬直などがみられ,さらに高齢者では筋萎縮を認める.
臨床症状
小児期は無症状で経過するか,症状があっても軽いことが多い.成人で運動後に筋の有痛性硬直,脱力などで気づかれる.激しい運動後ではミオグロビン尿を呈し,これによる腎機能障害を認めることもある.
検査成績
CK値は安静時でも高値を示すが,血中アンモニア,イノシン,ヒポキサンチン,尿酸などは運動後に上昇を認める.
診断
前腕非虚血性運動負荷試験での乳酸・アンモニア値測定が有用.確定診断には,生検筋を用いた筋ホスホリラーゼの活性測定が行われる.遺伝子診断では,日本人患者の約2/3で認められる高頻度変異(p.Phe710del変異)が存在する.
経過・予後
激しい運動を避けることでほとんどの症状は消失する.
治療
運動耐容能の改善のために,有酸素運動訓練が行われている.クレアチン投与も症状改善に有効とされている.運動前のグルコース投与が運動耐容能の改善に有効と報告されている.ビタミンB6の投与が試みられるがその効果は不明.側鎖アミノ酸製剤(BCA)投与はむしろ運動耐容能を低下させる.脂質異常症治療薬の投与によるミオパチー出現が報告されているため,注意を要する.[松原洋一]
■文献
Kishnani PS, Koeberl D, et al: Glycogen storage diseases. In: The Online Metabolic and molecular Bases of Inherited Disease, (Valle D, Beaudet AL, et al eds). http://www.ommbid.com/OMMBID/the_online_metabolic_and_molecular_bases_of_inherited_disease/b/abstract/part7/ch71
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報