…藤原貴族文化の総決算期ともいうべき12世紀に入ると,《普賢菩薩像》(東京国立博物館)や《釈迦如来像》(神護寺)のような,切(截)金(きりかね)を多用し艶麗な彩色を施す独特な耽美主義的作風が流行した。また紙絵と呼ばれる小画面の分野では,《源氏物語絵巻》(徳川黎明会,五島美術館)のような,いわゆる女絵系の濃彩絵巻や,《三十六人集》や《平家納経》のような料紙装飾が,情感と装飾美との一体化した比類のない領域をつくりあげている。このように院政時代において頂点に達した藤原貴族の国風美術は,以後の日本美術が大陸美術に対してみずからの固有な伝統を考える場合のよりどころ,すなわち日本美術の古典として機能するようになるのだが,その様式は見方をかえれば唐美術の様式の地方化が進んだ段階といえなくもない。…
※「紙絵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」