日本大百科全書(ニッポニカ) 「美作紙」の意味・わかりやすい解説
美作紙
みまさかがみ
美作国(岡山県北部)で漉(す)かれていた和紙。古くから美作は紙の産出国として知られていたが、美作紙という呼称は1477年(文明9)の『御湯殿上(おゆどののうえ)日記』3月15日の条に初出する。737年(天平9)の『正倉院文書』写経勘紙解(しゃきょうかんしのげ)に美作経紙の名がみられ、また『延喜式(えんぎしき)』の主計式には紙の上納国のなかに美作がみられる。江戸時代には津山を中心とした付近で、奉書、檀紙(だんし)などや三椏紙(みつまたがみ)が漉かれていたが、現在は津山市上横野で少数の専業家が漉いているほかは、むしろコウゾやミツマタなどの和紙原料の生産に傾いている。
[町田誠之]