コウゾ(読み)こうぞ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウゾ」の意味・わかりやすい解説

コウゾ
こうぞ / 楮
[学] Broussonetia × kazinoki Sieb.
Broussonetia kazinoki × B. papyrifera Vent.

クワ科(APG分類:クワ科)の落葉低木。樹皮繊維を紙の原料とするために栽培する。クワによく似た木で、高さ約6メートル。葉は先のとがった卵形であるが、深く2~3裂、もしくは5深裂するものがあり、縁(へり)には鋸歯(きょし)がある。雌雄異株で、春に多数の小花を、雌花では球状に、雄花では円柱状につける。本州から沖縄、および朝鮮半島、中国に分布する。果実は小核果が球状に集まったもので、初夏に赤く熟し、甘味があり生食でき、果実酒にもする。

 繁殖は根分けによって行われ、早春に植え付け、冬、2メートルほどに伸びた枝を根際から切り取り、それを束ねて蒸気で蒸して皮をはぐ。この皮を乾燥させたものを黒皮とよぶ。黒皮から表皮や古い繊維層を取り除いたものを白皮といい、この白皮が和紙の原料となる。コウゾの繊維は、紙をつくる植物繊維のなかでもっとも長い。そのため強靭(きょうじん)で、長く保存のきく美しい和紙がつくられ、障子紙や表具用紙、傘紙などに適している。

 コウゾはヒメコウゾB. kazinoki Sieb.とカジノキB. papyrifera Vent.との雑種と考えられている。ヒメコウゾやカジノキも枝の靭皮繊維手漉(てす)き和紙の原料とし、古代にはこれらの繊維で布をつくり、ゆふ(木綿)といった。

[星川清親 2019年12月13日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コウゾ」の意味・わかりやすい解説

コウゾ(楮)
コウゾ
Broussonetia kazinoki; paper mulberry

クワ科の落葉低木で,西日本および朝鮮半島に分布する。山地に自生するが,製紙の原料として田のへりなどに広く栽培される。葉は卵形のものが多いが,しばしばクワの葉のように2~3裂する。自生するものでは高さ 2mに達し枝を張るが,栽培のものはクワと同様毎年刈込むために大きくはならない。雌雄同株で,7月頃に球状に固まった花序をつける。雄花序は枝の基部に,雌花序は枝の上部に生じる。古くは樹皮の繊維で布を織り,ユウ (木綿) と呼んだ。和紙 (こうぞ紙) の製造は冬に刈取った枝を蒸してから皮をはぎ,一度乾燥してからたたいて繊維を解きほぐし,漂白したのち紙にすく。高知県をはじめ,山口県や佐賀,熊本両県などで生産が多い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android