改訂新版 世界大百科事典 「美弥良久」の意味・わかりやすい解説
美弥良久 (みみらく)
日本の西の果てにあり,死者が姿を現すと信じられた島の名で,《蜻蛉日記》《散木奇歌集》などにその趣旨で詠んだ歌がみえる。しかしさかのぼって《万葉集》巻十六には〈肥前国松浦県(まつらのあがた)美禰良久(みねらく)の崎〉,《肥前国風土記》松浦郡の条に〈美弥良久の埼〉,《続日本後紀》承和4年(837)7月条に〈旻楽(みみらく)埼〉がみえ,これらは五島列島南端,福江島の三井楽(みいらく)の地にあてられている。美弥良久埼は遣唐使の船が寄港し,やがて西南海上に船出してゆくところであった。海のかなたの死者の国としての〈みみらく〉の名が,根の国やニライカナイと相通ずるものであることを,柳田国男は示唆している(《海上の道》)。
執筆者:山田 武
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