美的対象(読み)びてきたいしょう(その他表記)ästhetischer Gegenstand

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「美的対象」の意味・わかりやすい解説

美的対象
びてきたいしょう
ästhetischer Gegenstand

美的対象はただそれ自体で成立するのではなく,美意識を相関者として初めて成立する。美的対象論は立場によって説が分れるが,美学史的には,近代において,美的対象を形式の側面において考察する形式美学と,内容の側面において考察する内容美学に大別された。前者は K.フィードラー,J.ヘルバルト,R.ツィンマーマン,K.ケストリンらに代表され,後者ヘーゲルシェリング,G.ジンメル,T.リップスらに代表される。現代では,美的対象,ことに芸術作品は存在様式,作品構造の側面において現象学的,あるいは存在論的に考察される傾向が有力である。 N.ハルトマンでは,芸術作品の構造は層構造として把握され,芸術作品はその存在の仕方からみれば「実在的な前景」と「非実在的な後景」の2層から成り,さらに後景層に関しては多層構造をもつとされた。また E.スーリオでは,芸術作品はその存在の仕方からみれば,「物質的」「現象的」「事物的」「超越的」の4つから成るとされ,各層間の相互照応関係が考察された。このほかに,芸術作品一般の構造分析論は M.デュフレンヌ,ハイデガー,F.カインツらによって試みられているが,同時に,各個芸術における作品構造の分析論も,たとえば文芸作品に関しては R.インガルデン,美術作品に関しては E.パノフスキーらによって試みられている。

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