ハルトマン(読み)はるとまん(英語表記)Karl Robert Eduard von Hartmann

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハルトマン」の意味・わかりやすい解説

ハルトマン(Nicolai Hartmann)
はるとまん
Nicolai Hartmann
(1882―1950)

ドイツ哲学者。マールブルクケルンベルリン、ゲッティンゲン各大学教授を歴任。初め新カント学派に属したが、フッサール現象学の影響を受けつつ独自の実在論存在論にたち、20世紀前半のドイツの指導的哲学者の一人となる。彼によると、認識とは、あらゆる認識に先だち、それから独立して存在するものそのものを把握することであるから、まず「自体的に存在するもの」の研究が行われねばならず、認識の批判は存在問題すなわち認識の形而上(けいじじょう)学に進む。存在問題は、認識されるにせよ認識されないにせよ、人間的関係を含めてあらゆるものにかかわる。だが、この存在の世界を構成する実在的な存在するものの全体は物質、有機体、意識、精神の4層に区別され、これらの層に対応したカテゴリーと4層に共通な基本カテゴリーがあり、存在論は「カテゴリー分析」となる、と考えた。著書『認識の形而上学綱要』Grundzüge einer Metaphysik der Erkenntnis(1921)、『存在論の基礎づけ』Zur Grundlegung der Ontologie(1935)など。

[千田義光 2015年3月19日]

『熊谷正憲訳『存在論の新しい道』(1976・協同出版)』『石川文康・岩谷信訳『哲学入門』(1982・晃洋書房)』


ハルトマン(Karl Robert Eduard von Hartmann)
はるとまん
Karl Robert Eduard von Hartmann
(1842―1906)

ドイツの哲学者。プロイセン将校の家に生まれる。軍人となったが(1858)病気のために若くして哲学に転じ、『無意識の哲学』の出版(1869)によって一躍有名となった。時事、社会、宗教問題などについて多方面な文筆活動を行ったが、彼の哲学はドイツ思弁哲学の諸成果、すなわちヘーゲル概念的理性とその自己止揚の思想ショーペンハウアー意志観念シェリングの無意識の理論を統合し、さらにそれを帰納的・自然科学的方法に基づいた近代科学の実証的知識と総合するという、壮大な形而上学(けいじじょうがく)的体系を目ざすものであった。

[伊東祐之 2015年3月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハルトマン」の意味・わかりやすい解説

ハルトマン
Hartmann, Nicolai

[生]1882.2.20. リガ
[没]1950.10.9. ゲッティンゲン
ドイツの哲学者。 1920年マールブルク,25年ケルン,31年ベルリン,45年ゲッティンゲンの各大学教授。マールブルク学派から出発したが,フッサールの現象学の影響を受け,新カント派の形式主義から離れ,観念論実在論の統一を試みた。彼の立場はフッサールの構成的現象学やハイデガーの解釈学的存在論と比べれば客観的傾向が強く,対象中心の存在論であり,実在的世界の層構造が問題とされた。倫理学的にはシェーラーの実質的価値倫理学の立場に近い (→価値論 ) 。美学的には美的対象を「前景」としての感覚的形象と「後景」としての理念的内容の2層的構造として把握した。主著『認識の形而上学』 Grundzüge einer Metaphysik der Erkenntnis (1921) ,『倫理学』 Ethik (26) ,『存在論の基礎づけ』 Zur Grundlegung der Ontologie (35) ,『実在的世界の構造』 Der Aufbau der realen Welt (40) ,『美学』 Ästhetik (53) 。

ハルトマン
Hartmann, Karl Robert Eduard von

[生]1842.2.23. ベルリン
[没]1906.6.5. グロースリヒターフェルデ
ドイツの哲学者。無意識の哲学の提唱者として知られる。終生講壇に立たず,個人教師として過した。彼の哲学は,無意識の概念をシェリングから導入し,ヘーゲルの「理性」とショーペンハウアーの「盲目的意志」の総合の上に築かれている。また認識論的には,物自体の存在を認める「先験的実在論」を主張した。美学的には「具象的観念論」の立場に立った。主著『無意識の哲学』 Philosophie des Unbewussten (1869) ,『認識論の根本問題』 Das Grundproblem der Erkenntnistheorie (89) 。

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