改訂新版 世界大百科事典 「老年精神病」の意味・わかりやすい解説
老年精神病 (ろうねんせいしんびょう)
senile psychosis
老年期に発症した精神障害の総称。老年期以前に発症した疾患が老年期まで続いているものや老年期になってから再発したものは原則として含めない。1980年に作られた《アメリカ精神医学会障害診断・統計用語集》第3版(DSM Ⅲ)では器質性精神障害のなかに分類しているが,1970年に世界保健機関(WHO)本部で発表した分類では,(1)脳の老化病変によるもの,(2)情動障害,(3)妄想症状群,(4)人格障害に4大別している。
(1)には脳萎縮性老年精神病(DSM Ⅳ 1994 では早発性と晩発性のアルツハイマー型認知症),脳血管障害(DSM Ⅳでは多発梗塞(こうそく)性認知症,1992年の《疾病及び関連保健問題の国際統計分類》第10版(ICD-10)では急性発症血管性認知症,皮質下血管性認知症など)が記録されている。(2)には情動精神病(晩発性うつ病,晩発性躁(そう)病),(3)には統合失調症(晩発性統合失調症(DSM Ⅳでは老年統合失調症は認めていない),妄想症状群),(4)には神経症,高齢期に発現した人格変化を含めている。
執筆者:加藤 伸勝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報