アメリカ精神医学会が作成する公式の精神疾患診断・統計マニュアル。Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの略称。精神科医が精神障害の診断のガイドラインとして用いる診断的分類表であり、アメリカ国内のみならず世界的に広く用いられている。1952年に第1版(DSM-Ⅰ)が刊行されて以来、第2版(DSM-Ⅱ、1968年)、第3版(DSM-Ⅲ、1980年)、第3版改訂版(DSM-Ⅲ-R、1987年)、第4版(DSM-Ⅳ、1994年)、第4版改訂版(DSM-Ⅳ-TR、2000年)と改訂が重ねられ、2017年時点で第5版(DSM-5)まで出版されている(第5版の出版は2013年)。第1版と第2版では精神障害を「反応」あるいは「障害」として分類していたが、第3版で新しい診断法として五つの軸で構成される多軸評定法が提示された。五つの軸は世界保健機関(WHO)の国際疾病分類ICD-10(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, 10th edition)の提示する疾患情報のコードに基づき、精神障害の特徴を示唆する診断基準を示すものであった。疾患分類も操作的診断基準を明確にすることを意図して症状を記述する形式が採用され、それまで取り入れられなかった疾患概念も包括されて診断名は大幅に増加した。五つの軸に基づく多軸診断(多軸評定法)の方法論は第4版改訂版まで引き継がれたが、第5版ではなくなっている。また、ことばの発達に遅れがないという点で自閉症と区別されていたアスペルガー症候群は、自閉症スペクトラム障害(自閉スペクトラム症)という広義の診断名に含まれることとなるなど、いくつかの大きな変更があった。
[編集部 2017年8月21日]
(2014-5-30)
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