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統合失調症 とうごうしっちょうしょう schizophrenia

翻訳|schizophrenia

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

統合失調症
とうごうしっちょうしょう
schizophrenia

代表的な精神障害で,他人に監視されたり他人の考えが吹き込まれたりするという妄想や幻覚,まとまりのない思考と奇異な行動が急性期の特徴。慢性期になると感情や意欲が乏しくなるという人格の変化や孤立して社会的な関係が他と結べなくなるなどの傾向が出てくる。

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知恵蔵の解説

統合失調症

精神分裂病に代わる新名称。2002年8月、日本精神神経学会が正式決定し、新名称の使用を関係行政機関に働きかけた。国際語としては、schizophrenia(スキゾフレニア=分裂した精神状態の意)が使われる。知覚や思考、感情、行動などの広い範囲に症状が現れ、10歳代後半〜30歳代半ばに発症することが多い。幻聴や妄想がよく見られ、その内容は被害的、迫害的であることが多い。自他の境界があいまいになり、外から考えを吹き込まれる(思考吹入)、自分の考えが周囲に伝わる(考想伝播)、何かに操られている(作為体験)などの体験があり、心が休まらなくなる。それらは陽性症状と呼ばれ、抗精神病薬が有効である。一方、意欲の減退や感情の平板化、思考の貧困化などの陰性症状は、主に精神科リハビリテーションによって治療する。いくつかの類型があるが、幻覚や妄想が強い妄想型、急に興奮したり、奇妙な姿勢や表情を示す緊張型、感情の乏しさや意欲の減退が主症状で、思春期から成人期初期に発病する破瓜(はか)型などがある。統合失調症は治療により病状が推移し、治療を行えば症状が強く出る期間は意外と短い。再発防止のためにも長期服薬が望ましい

(田中信市 東京国際大学教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

統合失調症

100人に1人がかかるとされる精神疾患で、かつては精神分裂病と呼ばれた。症状は幻覚や妄想、意欲低下、認知機能障害などで、生活に支障が出る人もいる。適切な治療で回復する人も少なくない。国内の患者は2011年時点で、推定で約71万人。

(2014-10-19 朝日新聞 朝刊 2社会)

出典|朝日新聞掲載「キーワード」
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デジタル大辞泉の解説

とうごうしっちょう‐しょう〔トウガフシツテウシヤウ〕【統合失調症】

schizophrenia》内因性精神疾患の一。病状や経過はいろいろあるが、自閉・感情鈍麻・興奮・妄想・幻聴や精神機能の分解などがみられる。青年期に発病するものが多い。早発性痴呆、精神分裂病を改称。

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百科事典マイペディアの解説

統合失調症【とうごうしっちょうしょう】

スキゾフレニア(schizophrenia)の訳語。精神分裂病に代わる名称として,2002年日本精神神経学会によって決定された。精神分裂病という訳語が,病気の実態や患者に対する誤解・差別などを生んできたという認識にもとづく。
→関連項目インシュリンインシュリン・ショック療法LSD緘黙症境界例拒絶症緊張病化粧療法行動療法誇大妄想昏迷錯乱神経症精神障害精神病精神分析療法精神療法電気ショック療法投射破瓜型パラノイア被害妄想不眠症分裂気質耳鳴り離人症ロボトミー

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栄養・生化学辞典の解説

統合失調症

 →精神分裂病

出典|朝倉書店
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家庭医学館の解説

とうごうしっちょうしょう【統合失調症 Schizophrenia】

◎青年期に発症する
[どんな病気か]
◎内因性(ないいんせい)の精神病
[原因]
◎幻覚、妄想、意欲の低下が主症状
[症状]
薬物療法が主体
[治療]

[どんな病気か]
 10歳代後半から30歳代前半の間に発症し、徐々に進行します。症状は、幻覚(げんかく)、妄想(もうそう)のほか、無為(むい)(意欲が低下し、何もしなくなる)、自閉(じへい)(他人と交流をもたなくなり引きこもりがちになる)がおこってきます。人格も、病気になる前と比べて、創造的で生き生きした部分がなくなります。2002年に精神分裂病より呼称が変わりました。

[原因]
 およそ120人に1人の割合(0.8%)で発症します。かなり高い頻度であり、けっして「珍しい病気」ではないのです。
 脳内の神経と神経の間ではたらいている物質が関係しているといわれていますが、明らかな原因はまだわかっていません。ストレスや環境の変化など、外部の因子でおこったのではなく、脳の中に原因があるという意味で、統合失調症と躁(そう)うつ病は、内因性精神病(ないいんせいせいしんびょう)ともいいます。
 両親の一方が統合失調症の場合、その子どもが統合失調症になる割合は約16%といわれ、一般人口中の統合失調症になる割合より高いことから、発症には、ある程度遺伝が関係していると考えられています。
 しかし、一卵性双生児(いちらんせいそうせいじ)の1人が統合失調症であっても、もう1人が統合失調症である確率は100%ではなく、約60%であり、このことは、統合失調症の発症には、遺伝だけではなく、それ以外の要因も関係していることを示しています。

[症状]
 幻覚、妄想、意欲の低下がおもな症状です。
 そして、幻覚、妄想、興奮(こうふん)などの派手(はで)な症状(陽性症状(ようせいしょうじょう))と、意欲の低下、自閉、感情鈍麻(かんじょうどんま)といった目立たない症状(陰性症状(いんせいしょうじょう))に分けられます。病気の初期には、陽性症状が主体ですが、徐々に陰性症状が主体になってきます。
 抗精神病薬は、陰性症状よりも、陽性症状によく効きます。陰性症状に対しては、薬物療法だけでなく、作業療法デイケアなどを行なっていきます。
●幻覚
 実際にはないものをあると知覚することを幻覚といいます。知覚の内容によって、幻聴(げんちょう)、幻視(げんし)などに分けられます。たとえば「人の声が聞こえる」(幻聴)、「物が見える」(幻視)などと訴えます。
 統合失調症でもっともよくみられる幻覚は、幻聴です。幻聴の多くは人の声です。話される内容はさまざまですが、「……しろ」と命令したり、本人の悪口や本人を迫害するような内容が多く、このことで患者さんは非常に不安な気持ちになったり、被害妄想(ひがいもうそう)を抱いたりすることがあります。
●妄想
 事実ではないことを、本当であると確信することを妄想といいます。周りの人が、「それはちがう」と説得しても、訂正できません。内容によって、被害関係妄想(ひがいかんけいもうそう)(無関係なことを自分自身に関係があると被害的に確信します。たとえば「あの人がせきをしたのは自分へのあてつけだ」など)、注察妄想(ちゅうさつもうそう)(「誰かから家の中を監視されている」など)、被毒妄想(ひどくもうそう)(「食べ物に毒を入れられている」など)、血統妄想(けっとうもうそう)(「自分は天皇家の子孫だ」など)、誇大妄想(こだいもうそう)(「自分はすごい発明をした」など)と名前がつけられています。
●意欲の低下
 統合失調症では、徐々に意欲がなくなっていくのが特徴です。程度の差はありますが、多くの患者さんにみられます。仕事をてきぱきできなくなるという軽いものから、学校や職場を休みがちになる、家でごろごろするようになる、入浴をいやがったり、身の回りをかまわなくなるなどさまざまです。
 意欲の低下がひどくなると、1日中ボーッとして、ほとんど何もしない状態となり、これを「無為(むい)」と呼んでいます。
●自閉(じへい)
 他人との交流が乏しくなります。友人との付き合いを避け、家にこもりがちとなることで、気がつかれます。
●感情の鈍麻(どんま)
 喜怒哀楽(きどあいらく)の豊かな感情が少なくなります。テレビをおもしろく感じなくなったり、笑顔がみられなくなったり、悲しいときも平然としていたりします。
●思路(しろ)(思考過程)の障害
 患者さんの話し方でわかります。よくみられるものに「思路弛緩(しろしかん)」があります。話が徐々に別の話題にそれていったり、唐突に別のことを言い出したりします。重症になると、他の人にはまったく話の意味が理解できない「滅裂思考(めつれつしこう)」になります。
●身体症状
 不眠が多くみられます。病気の初発症状や、再発するときの最初の症状であることが少なくないので、注意が必要です。身体面には何も異常がないのに、動悸(どうき)、頭痛、倦怠感(けんたいかん)などの、いわゆる身体愁訴(しんたいしゅうそ)を訴えることもあります。
●表情に現われる症状
 ぶつぶつ独(ひと)り言(ごと)をいう独語(どくご)や、おかしくもないところで笑う空笑(くうしょう)がみられます。しかめ顔(がお)(顔をしかめる)、ひそめ眉(まゆ)(眉をひそめる)がみられることもあります。感情が鈍くなる感情鈍麻のため、顔の表情が乏しくなります。
◎病型
 大きく、破瓜型(はかがた)、妄想型(もうそうがた)、緊張型(きんちょうがた)に分かれます。
●破瓜型
 破瓜期とは思春期のことをさします。3型のなかでも発症年齢が低く、思春期によく発症します。統合失調症のもっとも典型的な病態といわれています。幻覚、妄想といった陽性症状もありますが、むしろこれより意欲の低下、自閉といった陰性症状が目立ちます。急に症状が出るのではなく、ゆっくりと現われてきます。1~2年たって、発症に気がつくことすらあります。
 初めは学校を休みがちになったり、友人と遊ばなくなったりします。家族も、「なまけ」ぐらいに考えているうちに、ほとんど家にこもるようになり、家族とも話をしなくなります。また、入浴や着替えをいやがり、不潔でいても平気になるなど、だんだん病状が進行するにつれて、人格の水準が下がってきます(コラム「人格とは」)。
●妄想型
 妄想が主症状です。発症年齢は3型のなかでも高く、20歳代後半から30歳代に多くみられます。破瓜型のように、人格水準が徐々に下がることは少なく、比較的人格が保たれています。
●緊張型
 興奮、滅裂な言動あるいは緘黙(かんもく)(押し黙ること)、幻覚、妄想が急速に(数日から数週の間に)おこってきます。
 症状は非常に激しいのですが、持続は短く、1~3か月もすれば、ほぼ落ち着きます。病状が落ち着いた後は、破瓜型のような人格の低下はあまりみられません。ただし、再発しやすいのが特徴です。
◎経過
 経過はさまざまですが、最初は幻覚や妄想、落ち着かない状態で始まり、薬物療法で幻覚や妄想がおさまっても、その後で意欲の低下した状態が続く場合が多くあります。
 薬物をやめてしまった後や、ときには薬物服用中でも、再び落ち着かない状態になり、病気が再燃(再発)することがあります。このような再燃は何回かくり返すことがあります。
 意欲の低下や自閉は、経過とともに徐々に強くなっていき、病気になる以前より人格の水準が落ちます。これを欠陥状態(けっかんじょうたい)と呼んでいます。
 ほぼ完全によくなる場合が3分の1、欠陥状態になる場合が3分の1、人格の荒廃(こうはい)(コラム「人格とは」)をきたす場合が3分の1といわれています。

[治療]
 薬物療法が治療の中心です。抗精神病薬という薬を飲みます。この薬は、とくに幻覚や妄想によく効きます。
 幻覚や妄想が薬で消失した後に、軽度の抑うつ状態になることがあります。抑うつ状態が改善しても、意欲の低下した状態が続きます。
 この時期には薬物療法に並行して、軽作業やレクリエーションなどを行なう、作業療法やデイケアに通うなどして、意欲や自発性の低下を改善するようにします。
 抗精神病薬の副作用として、手足の動きがかたくなったり、手の指が細かく震(ふる)えたり、足がむずむずしたりする症状が出ることがあります。このため、パーキンソン病の治療に使う薬を飲んで副作用を防ぎます。また、便秘(べんぴ)、眠け、目が見えづらいといった副作用が出ることもあります。
 このような症状が出たときは、医師に相談して、副作用を防止する薬を出してもらったり、薬を調節してもらったりします。副作用が出たからといって、勝手に薬を中断するのはやめましょう。
 薬は再発予防の効果もあるので、病状が落ち着いても、飲み続けることが多いのです。病状が落ち着いた時期でも、よくなったからといって、薬を勝手にやめないようにしてください。
 心理的にはたらきかける精神療法も、薬物療法や作業療法に並行して行なわれます。身体的治療法の電気けいれん療法は以前に比べて、行なわれることが少なくなりました。
●家族はどう対応すればよいか
 精神科、神経科(神経内科ではありません)、精神神経科を標榜(ひょうぼう)している病院もしくは診療所を受診します。患者さんは病識(びょうしき)(コラム「病識とは」)がないので、受診をいやがることがあります。このときは、まず家族だけが病院に行って相談してもかまいません。また保健所でも、相談にのってくれます。
 診察しても、すぐに統合失調症と診断できないこともありますが、この場合は医師が経過をみていきます。統合失調症のような症状をだしながら、別の病気(脳炎(のうえん)、脳腫瘍(のうしゅよう)、その他のからだの病気)が原因のこともあります。
 統合失調症の症状が軽いときや、家族が家で看(み)られる場合は、外来治療になります。
 患者さんの苦痛がひどいときや、症状が激しく家族が家で看られない場合は、入院になります。
「統合失調症」といわれた場合、非常に驚くでしょうが、前でも述べたようにまれな病気ではありません。就職などなんらかのストレスの後で発症することもありますが、これはあくまでも引き金でしかないと考えられています。ストレスや環境とかの外的要因でおこる病気ではありません。ましてや、親の育て方が悪かったためにおこった病気ではないのです。
 病気はよくなったり悪くなったりをくり返すことがあるので、あまり一喜一憂しないほうがよいでしょう。長期戦と思って、どっしり構えてください。そのほうが家族も疲れませんし、患者さんにとってもよい影響を与えます。
 精神障害者対象の福祉関係の制度も、積極的に利用するとよいでしょう。条件を満たせば、障害基礎年金(しょうがいきそねんきん)の支給が受けられます。通院費の公費負担や精神障害者手帳の交付の制度もあります。かかりつけの病院、保健所、役所の国民年金課などで相談してみてください。
●社会復帰のために
 幻覚や妄想などの症状が軽快して、意欲の低下が強くなった場合、入院患者さんには、作業療法を行なうこともあります。簡単な作業をしたり、レクリエーションや趣味的なことをするなどさまざまです。
 入院患者さんまたは通院中の患者さんに、生活技能訓練(SST)という社会復帰のための教育をすることもあります。
 通院患者さんのためのデイケアは、医療機関のほか、保健所でも行なわれています。
 そこでは、スポーツ、料理などいろいろなプログラムがあり、サークル活動のような雰囲気のなかで、社会性や対人関係の改善を目ざします。
 通所授産施設(つうしょじゅさんしせつ)、共同作業所は、一般の就労がまだむずかしい人が作業をするところです。
 ひとりで生活することができない人のために、生活訓練施設(援護寮(えんごりょう))、福祉ホーム、グループホームといった、患者さんが共同で住める施設も、少しずつですができてきています(「精神保健福祉法と入院形態」)。

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大辞林 第三版の解説

とうごうしっちょうしょう【統合失調症】

精神障害の一。病因は今なお不明。多くは青年期に発病し、感情の鈍麻・自閉症状・意志の減退・奇妙な行動・幻覚・妄想などを示すが、症状の現れ方や経過は複雑で多様。精神分裂病から改称。

出典|三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

統合失調症
とうごうしっちょうしょう
schizophrenia

代表的な精神疾患の一つ。19世紀末ドイツの精神医学者クレペリンにより早発性痴呆(ちほう)dementia praecoxといわれたものであるが、1911年スイスのブロイラーが精神病理学的にとらえ直しスキゾフレニアschizophreniaという名を提唱した。日本ではschizophreniaを直訳した精神分裂病という名称が1937年(昭和12)より用いられてきた(精神乖離(かいり)症、精神分裂症といわれたこともある)。しかし、精神それ自体の分裂と誤解されやすいこと、患者の人格否定につながるなどの理由から、2002年(平成14)schizophreniaを訳しなおした「統合失調症」に改められた。
 思春期から青年期に発症する例が多く、放置すると徐々に増悪を繰り返しながら経過し、やがて特有な人格の変化をきたし、周囲に無関心となって自分だけの世界に閉じこもってしまうもの(自閉)である。しかし、早期発見と適切な治療により回復可能であり、再発を防ぐ努力もなされ、以前よりも重篤な状態におちいることが少なくなった。原因は今日なお不明であるが、発生頻度は100人当り1人といわれている。[保崎秀夫]

症状

おもな症状を、患者自身が訴えるもの、周囲の人がわかるもの、専門医がみてわかるものに分けて述べる。
 患者自身が訴える症状は、幻聴や妄想を中心に、幻触、させられ体験(作為体験)、思考への影響体験、考想伝播(でんぱ)などがあげられる。幻聴には、だれもいないのに自分の言動を非難し批判する声が聞こえたり、自分の考えていることが声になって聞こえる思考化声があり、妄想には、病的な確信をもっていて周りの人が説得しても訂正不能であり、周囲のできごとに意味づけをする関係妄想、自分の地位・生命・財産が脅かされるという被害(迫害)妄想、心身の状況について病的に悩む心気妄想、大きなことをいう誇大妄想、連れ合いの不貞を確信する嫉妬(しっと)妄想などがある。させられ体験は、自分の考えや動作が他人により支配され操られていると感ずるもので、思考への影響体験は、自分の考えを抜き取られたり、他人から考えを入れられたりしていると感ずるものである。また考想伝播は、自分の考えが周囲に広まりわかってしまうと感ずるものである。
 周囲からみてわかる症状は、話の筋(すじ)が乱れたり支離滅裂であり、表情の硬さ、冷たさ、ひとりごとやそら笑い、周囲にそぐわない感情の反応、周囲への無関心、ときにみられる緊張病性興奮、奇妙な症状、たとえばなんでも拒否する拒否症状、口をきかない緘黙(かんもく)症、拒食症、拒薬症やおうむ返しをする反響症状、同じことを繰り返す常同症、わざとらしくて奇妙な衒奇(げんき)症、とらされた姿態をとり続けるカタレプシーcatalepsyのほか、自分だけに通用する言語をつくる造語症や、なんでもいわれたとおりに行動する命令自動症などがある。また、進行した時期にみられるやる気のない(無為)状態もある。幻覚や妄想、させられ体験などを陽性症状、無為や不適切な感情反応などを陰性症状とよぶこともある。また、自ら病気であるという自覚がない(病識欠如)。
 重要なのは専門医が患者に接してみて初めてわかる症状で、心のなかに入れない非疏通(そつう)性や共感できないこと、病気らしい特有な印象(プレコックスpraecox感)がある。[保崎秀夫]

分類

症状や経過によっていくつかに分けられているが、代表的なものは次の三つである。
(1)破瓜(はか)型・解体型(破瓜病) 比較的若いころから徐々に始まり、放置すると慢性に経過して人格の荒廃に陥ってしまうもので、統合失調症の中心的な型である。初めは幻覚や妄想があっても、やがてなにもしなくなり周囲に無関心となってしまう。
(2)緊張型(緊張病) 若いころから発病し、激しい興奮があったかと思うとなにもしなくなる(昏迷(こんめい)状態)というような行動面での動きが目だつものである。
(3)妄想型 前二者よりも遅く発症し、幻覚や妄想が目だち、比較的人格の崩れの少ない型である。
 これらの型のほかに、症状があまり目だたない単純型、神経症や性格異常と区別しにくく境界例に近い偽(ぎ)神経症型あるいは偽性格異常型、そううつ病の症状が前景に出て非定型精神病に近い分裂・情動型、精神遅滞のうえに分裂病が発症した接枝分裂病などがあり、年齢層による分類も行われている。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD)では、妄想型、破瓜型、緊張型、鑑別不能型(分類不能型)、分裂病後抑うつ、残遺型などに分けられている。[保崎秀夫]

予後

経過と予後は、3分の1は治癒し(寛解という)、3分の1は悪化し、残り3分の1は一進一退を繰り返し、よいときは仕事を続けられるが、ときに入院あるいは外来で治療を行うといわれている。一般には、ときどき悪化するという波形の経過をたどるものが多い。[保崎秀夫]

治療

今日では抗精神病薬療法が中心で、できるだけ外来通院で家庭や地域で治療する方法がとられており、やむをえないときに入院加療を行う。
 抗精神病薬としては、フェノチアジン系剤、ブチロフェノン系剤、ベンザミド系剤、イミノジベンジル系剤などの定型抗精神病薬に加えて、ベンズイソキサゾル系等の非定型抗精神病薬が投与されており、服薬しながら通学や通勤していることが多い。電撃療法は限られた必要時だけ行われ、インスリンショック療法、脳外科的手術はまったく行われない。
 精神面での支え(精神療法)や環境の調整も重要で、家族や学校、勤務先の協力が治療上欠かせない。なお、規則正しい生活に戻し、社会復帰を図るために、生活指導、生活技能訓練(SST)、集団精神療法、作業療法(各種の段階がある)、レクリエーション療法や芸術療法などが症状に応じて行われ、病院から直接自宅へ帰れない場合は、とりあえず社会復帰のための施設に入って指導を受けたり、自発性の回復、自立の援助のための試みがなされている。自宅にあっても、昼間に施設や病院で指導を受けるデイ・ケア療法が行われており、社会とつねに接触しながら治療するための早期退院、外来通院療法、社会復帰施設の利用、地域内での治療などが積極的に行われている。[保崎秀夫]
『保崎秀夫著『新精神医学』(1990・文光堂) ▽保崎秀夫著『うつに悩む方へ』(1995・主婦の友社) ▽保崎秀夫編『幻覚』(1999・ライフサイエンス) ▽保崎秀夫著『うつ病の人の気持ちがわかる本』(2001・主婦の友社) ▽伊藤順一郎著『統合失調症/分裂病とつき合う』(2002・保健同人社) ▽福西勇夫編著『統合失調症がわかる本――正しい理解と対処のすべて』(2002・法研) ▽朝田隆・高橋清久著『セカンド・オピニオン精神分裂病/統合失調症Q&A』(2002・医学書院) ▽C・S・エイメイソン著、松島義博・荒井良直訳『再発防止のためのサイコエデュケーション』(2003・星和書店) ▽P・J・ワイデン他著、藤井康男・大野裕訳『新薬で変わる統合失調症治療』(2003・ライフサイエンス) ▽森山公夫著『統合失調症――精神分裂病を解く』(ちくま新書)』

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